「俺が戻ってきたのはこうだ」


影武者の役はしっかりこなしてたんだ。
だが、政府の守護障壁とやらを管理する物が
故障したらしくてな、それに乗じて敵が入り込んだ。
俺達の部隊は応戦して残ってる。
空木の旦那に華の所に何かが向かったと聞いてな。
通信端末でお前らの所に連絡してこっちに戻ったら転送門の光が消えた。


「華様の怪我が原因ですか?」
「それもあるかもな、とにかく俺達に今できることは」


華を護って、皆が本丸に帰るまで看病することだ。
転送門が使えない以上、こっちで処置するしかない。


「ぅ・・・ん」
「薬研兄ぃ、熱が出てきたみたい・・」
「!・・・乱、着替えてくっから、その間に兄弟に指示出しててほしい」
「任せてよ!」


皆集まって!!


薬研が薬を作るから、その手伝いをする班
華の護衛と看病をする班
食事を準備する班


「に、わけようとおもうんだ」
「・・・薬の班、ぼくがいくよ」
「小夜君は薬に使う野草とか収集にいくことあるもんね」
「うん・・・」
「ならば、僕も手伝います」
「じゃあ、前田と小夜君は薬班ね」
「僕は乱と華の護衛につきますね」
「よろしくね平野」
「ぼ、ぼく、お粥作ってきます。皆のは・・おにぎりと御味噌汁で、いいですか?」
「いいよ!五虎退よく燭台切さんのお手伝いしてるもんね」
「は、はい・・ぼくも、頑張ります!」
「なら、俺も五虎退を手伝うぜ」
「御願します、厚兄さん」
「お水変えてきました」
「有難う秋田!」
「では、ぼくはせいふとれんらくがとれるしゅだんをさがします」


こうして、短刀らによる初の短刀だけの任務が開始されたのである。




――――・・・・。


ゴリゴリ・・・。


「薬研・・・これ・・・」
「ああ、悪ぃな。前田、ここにその粉足してくれ」
「はい、わかりました」



――――・・・。


ぐつぐつ・・・


「五虎退」
「は、はい!な、何か間違えてますか!」
「いや、美味そうな匂いだなって」
「た、卵をつかって・・・」
「卵粥か!華も喜ぶだろうよ!」
「!・・・えへへ」



―――・・・。


「みだ・・れ・・・ちゃ・・」
「華!起きたの」
「いまちゃん・・・に・・」
「今剣?」
「引出の・・・鈴・・・」
「わかった。秋田、今剣に引出の鈴を持ってきてもらって」
「わかりました。いってきます!」


――――・・・。


以前、政府の手によって本体の姿に戻された際に、
蔵の下の空間に薬研が隠されていたことがあった。
そこに皆で避難し、万が一の敵襲の際も見つからないように隠れた。
華は傷の痛みに時々丸くなり、その熱で小さく息をしているが
薬研の処置と、皆で作った薬によって大分容体は安定してきた。
五虎退と厚が作ったおにぎりと味噌汁も綺麗に食べて、
華も少し残してしまったが、卵粥を美味しそうに食べていた。
地下のこの部屋に入る扉は一つだけ。
平野と小夜がいつでも刀をぬけるように控える。


その日、部隊の皆が帰ってくることはなかった。




ガタッ・・・


「!?」
「誰か、くる・・・」


僅かな物音を聞き、皆が本体に手をかける。
敵か、それとも誰か戻ってきたのか。


「薬研!!厚!!皆ここかい!!」
「いち兄?」
「ぼくが華に教えてもらった鈴で連絡をとりました」


扉を開けると、珍しく焦った様子の一期が飛び込んできた。
その後ろから物凄い速度で何かが華に飛んでいく。


「主様あああ!!!!」
「狐の旦那、傷にさわる待て」
「っ・・・ぐぬぬ・・・・」
「それに、今薬が効いて寝てるから起こさないでね」
「うぅ・・・主様・・なんと御労しい」


まだ不完全で全員が帰ることは出来ないらしいが、
少しずつ本丸に部隊が帰還するらしい。
政府に現れた敵は全て殲滅に成功。
本丸の皆は早くこちらに戻りたくてうずうずしているようだ。


「皆、よく頑張ったね・・・」


いち兄の言葉に、小夜も小さく笑みを浮かべて。
粟田口兄弟らも、満面の笑顔を浮かべて
皆の帰還を今か今かと待つことにした。









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