「留守の間、弟達を宜しくお願い致しまする」
「うん、いち兄、皆も気をつけて行ってきてね」
「主様・・・すぐに戻ります故・・・」
「こまるも、みんなをお願いね」


転送門を潜る皆を見送り、振り返る。


「華様!大丈夫ですよ!」
「そうそう、会がおわったらすぐにかえってくるって!」
「それに、影武者もいるしね」
「うん!」



――――・・・・。


「・・・・」
「座って黙ってれば問題ないだろう・・・」
「・・・・はぁ・・・大将の為だしな・・・」
「では、我々は会へ行ってくる。影武者の務め、任せたぞ薬研」
「嗚呼、任せてくれや・・・しっかし、こんな格好・・・」


本丸には兄弟が残っている。
短刀以上の者が全員出払ってしまっているが、
特に何も問題は起こらないだろう。

選抜されなかった者らは遠征に出向くことになっていて
今本丸は薬研を除く短刀らしかいない。
兄弟も、皆も信じている。大丈夫だ、万が一何かあれば
空木から預かった通信端末で本丸と会話が出来る。


盛大な溜息を吐いて、薬研は用意された椅子に座り、
会の様子を遠目に見守ることにした。



―――――・・・・


「すぅ・・・すぅ・・・・」
「華様、寝ちゃいましたね」
「では、床を敷いてきます」
「まかせましたよ、前田」


縁側で丸くなって眠る華に自然と笑みが浮かび、
皆静かに読書や、簡単な掃除をして過ごすことにした。


「ひーまー・・・」
「愛染、しょうがないだろ」
「けどよ厚、俺も出たかったなぁやっぱ!」
「そりゃあ皆出たかったろうよ。けど、仕方ねえだろ」


二人の会話を聞きながら、五虎退は虎にブラシをかけてやる。
気持ちよさそうに喉を鳴らして虎は伸びをする。
優しい眼差しでブラッシングを続けていたのだが、
ふと何かの気配を感じて転送門を見た。
まだ誰か戻るには時間が早すぎる。けれども、何だろうか。


「!・・・あ、薬研兄さんの通信機?」


虎がちょいちょいと突くそれが雑音を鳴らす。
赤い印を押すように聞いていたそれを押してみる。


「っ・・誰―――ッ聞こえ―――」
「薬研兄さん?ぼくです。五虎退です」
「五虎―――華のとこへ!!!」


「え・・・・」


華の部屋の辺りに、雷が落ちる。
空の色が急激に曇天に変わる。
本丸に満ちている華の穏やかな霊気ががらりと
変わって、肌がびりびりと痺れるような。


五虎退は薬研の言葉に咄嗟に走り出した。


――――・・・・


「華!!!」
「華様!?しっかりしてください!!!」
「厚兄さん!!薬研兄さんから・・・っぁ・・・」


部屋についたとき、障子は血に塗れ、酷い有様だった。
どこから入り込んだのか、敵の打刀、脇差、短刀の骸が転がる。


「何だあいつ・・・ッ早すぎるだろあの槍・・・」


華の近くで絶命している槍は、今までに見たことのない
禍々しさを纏っている。状況を聞くと、その槍が先陣をきって
華へ向かったのだそうだ。咄嗟に守護の方陣を展開したようだが
あまりの速さに僅かに腹に傷を負ったようだ。
乱が布で傷を抑えて止血している。


「浅いといえば浅いけど・・それでも華は小さいから・・・」
「傷には変わりありません・・・」
「や、薬研兄さんが通信してきて・・・っ」


転送門が作動した気配がする。
全員で警戒し、華を護るように構えた。
何かが走り寄ってくる。新たな敵か、それとも。


「ぜぇ・・っ無事か!!」
「薬研!?華がっ!!!」
「ちぃ・・遅かったか・・・すぐ治療する、皆手伝ってくれ」




それから、悪い知らせも聞いてくれや・・・。











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