本丸を護る空間は、何も本丸だけが存在しているわけではない。
転送門の指定をしなければ、外へと通じている仕組みだ。

外は景観を変えることで季節が変わり、たとえば春の景観であれば
桜が咲き、下にある小さな町へと続く。

その道のりは、例えるならば段々畑が広がっている。
その間に道があり、そこを真っ直ぐ下りればつく。

小さな町ではあるがそこには世話になっている万屋が存在する。
刀剣男士らも何かを買い求める際利用する場所だ。

万屋以外にも、彼らに合うように配慮されているのか、
呉服屋、小物屋、ほぼ買い物施設が占めている。
中には甘味の店もあり、審神者が自身で歩けるころには
土産を買って帰ってくれたものだ。


そんな懐かしい思い出。



―――――・・・・。


「お嬢!光坊が今日の夕餉を決めようと・・・?」


言葉通り、今日の夕餉を決める為に華の部屋を訪ねた鶴丸だったが
部屋の中は空で、目当ての華の姿は見当たらない。
先刻までいたはずなのだが、厠でもいったのだろうか?


「ふむ、どこへいったのかねぇ」
「・・・どうした」
「おお伽羅坊!お嬢を見なかったか?」
「?・・・・三日月と何か話していたぞ」
「そうか!すまんな」


三日月の部屋でまた茶菓子でも食わされているんだろう。
そう考えながら鶴丸は足を進める。倶利伽羅も無言ではあるが
後ろをついてくるようだ。さすが、静かなる守護者だ。
華の居場所は知っておきたいのだろう。


それを、慣れ合うというんじゃないのか?伽羅坊。


「おお、鶴丸。それに珍しいな大倶利伽羅も」
「三日月、お嬢にあんま甘味を食わすなよ?夕餉が入らなくなるだろ」
「ふむ?今日はまだ茶菓子をやってはおらんぞ」
「?・・・・さっき、話をしてたろ」
「嗚呼、いやなに実はな―――」



先刻、何か元気のなさそうな華を見かけてな。
気になって声をかけてみたのだ。
そうすると、どうやら使いをしたいそうでな。


「みんなにおつかいにいきたいから欲しいものはないのかと聞いてまわっていたようでな」
「使いだって?外に出るってのか」
「うむ。身形は幼子だが、華も十二だ。」
「・・・・・それで」
「嗚呼、皆に気持ちだけでやら、特に何もないといわれたそうでな」



だが、あまりに気の毒だった故に、俺が使いにだした。



ぽかんとする二人。ぽやんと首を傾げる天下五剣。


「・・・・いや、いやいやいやいやいや」
「何かまずかったか?」
「誰といったんだ?誰と」
「共に行こうと言うたのだが、一人で行きたいと言うてな」


万屋まではそう遠くはない。時間遡行軍も現れはせんさ。


「それに、俺も不安でないわけではない・・・だが」


父親らしく振舞うという方法も知らぬ。
だが、甘やかしてばかりもいられん。


「故に、心を鬼にして使いを頼んだ」
「・・・・」
「三日月さん!!!華ちゃんを一人で行かせたって本当?!」
「おお燭台切」
「鶴さんが戻ってこないから探してたら鳴狐君から聞いたんだよ!!」
「そうかそうか、見送りはいてくれたのだな」
「じいさん安心するのはそこじゃないっ」
「重たい物とか頼んでないよね!?華ちゃん小さいし女の子だし!!」
「ああ、軽い物を頼んだぞ」


みかんと団子だ。


聞き終わる前に、三人は風のように駆けて行った。


三日月は驚いたように固まっていたが、
くつりと笑い、華の帰還を待つことにした。










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