鶴丸国永が審神者の元へやってきたのは、
三日月が顕現されて少し後のこと。


そして、審神者が老いて本丸に戻り、時が経って。



庭からは可愛らしい子供の声がするようになる。


嗚呼、またはしゃいでいるんだな。


穏やかな空気、平穏。悪くない。


「孫様!!危ない!!!」
「!?」


誰かの叫ぶ声に、反射的に体が動いていた。
声の方へ駆けていくと、着物を泥だらけにして
転んでいる小さな子供の姿。


「やれやれ、お転婆な姫さんだなぁ」


手を差し出すと、大きくて丸い眼が此方を見た。


「!・・・・ぇ・・・っ」


その時に見えた、三日月模様には見覚えがあった。
しかしそれも一瞬で、舌足らずな「おちゅる?」という
言葉にかき消されたかのように、見えなくなっていた。


「あ、あぁ・・・ほらよっ姫さん」


そして、その後に知る審神者のあの歌。



―――――・・・・・。


「鶴丸・・・・そなた・・・」
「一度だけだったなら、気のせいですんだんだ。だが、あれから何度か同じように」


華の瞳に三日月が浮かぶことがあった。
それは俺が気にしていたこともあってだろう。


それから、姫さんから、お嬢と呼び方が自然と俺の口から変わったのさ。


「・・・・そう、か」
「三日月・・・あの日君しか結局日誌を読んでいない」


つまり、まだ本丸でこのことを知っている者はいないということだ。


それはつまり


「華も、同様にな」
「・・・・・・やはり、知らせた方が、いいのか」
「どうだろうな、こればっかりは厄介だ。俺にもわからん」


隠していた徳利を奪い、僅かな酒を拝借する。
何れ、わかることなのかもしれない。
いつ告げるべきなのか、それともこのまま告げないほうがいいのだろうか。


「とりあえず、今出来ることはだ」
「嗚呼・・・」
「寝ろ。酒臭いぞ。それでは頭も働かないだろう」
「・・・・・・」
「下してやるから、ほらっ」



そうして、夜が更けていく。


―――――・・・・・。



「主様、如何されましたか?」
「こまる・・・目に・・何かちくちく・・・」
「!・・・失礼致します」


筆を止めて目をこすっている華に、小狐丸は気づき声をかける。
どうやら何か塵でも入ったのか、嗚呼そんなに擦ってはいけませぬ。
手を掴んで止めて下させる。


「触りますよ?」
「んー・・・」
「睫毛・・・ですかね。」
「とれたー!」
「それはよかった」
「もうお目目ない??」
「ええ、主様の綺麗な目・・・が・・・?」


はて、主様の綺麗な瞳は、模様などあっただろうか。
否、この小狐丸にはわかります。斯様なものはなかったはず。
それに、この模様は見覚えがあるなどというものではない。
これは、明らかに・・・・



「こまる???」
「あ、いえ・・とれておりますよ」
「よかった!お筆続き書くね!」
「わかりました。・・・・主様、少しだけ席を外します故」
「うん!いってらっしゃい!」


確かめねばならない。疑問に思っていたことがあったのだ。

問いたださなければ、あの者に。



――――三日月宗近に・・・・。











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