カタカタと、小刻みに震える刀が一振。
それは妖しい光を放ち、幾重にも札が貼られた部屋の中。
政府の厳重に警備された場所にあった。



――――・・・・。


本丸が騒然となる少し前のこと。


「わあ!おっきいおいも!!」
「がっはっは!豊作じゃのお!!」
「むつ!おいも籠にいれよ!おっきい籠!」
「まぁかせちょけ!ちっくと待っとぉせ」


納屋に予備の籠を取りに向かう陸奥守を見送って
華は楽しそうに芋ほりを再開した。
離れた場所では大倶利伽羅が鍬を振り上げている。
その近くでは秋田が土から虫を発見し乱が何か叫んでいた。


くらり・・・


一瞬華の視界が揺らぎ、手を地面についた。
突然のことに暫く体が固まり、じっとしてしまう。


「・・・どうした」


いつのまに近づいてきていたのか、
大倶利伽羅が声をかけてきた。


ほんとうに一瞬だけだったので、体に異変はもう感じない。


「なんでもないよ!からちゃんおいもすき?」
「・・・嫌いじゃない」
「ふふ!たくさんうれしいなっ」
「・・・・(気のせい、か)」


遠目だったがよろけたきがして、何かあったかと近づいたのだが。
特に顔色も悪くなさそうだし、元気に声をかけてくるいつもの華に
気にしすぎかと鍬を抱えなおし持ち場に戻った。


「わあミミズさんだあ!」


「華、楽しそうですね!」
「みみず気持ち悪いよー。秋田もよく平気だよね」
「みみずがいると土が良いと聞きました!」
「そうなの?」


ぞわり。


「!?」


やはり、何かを感じる。
華は背を何か得体の知れない気持ち悪いものに
撫でられるような感じがして小さく「ひっ!?」と声を漏らした。


辺りを見回すが何もいない。

何だろう、先程まで体調がよかったのに急に気分が悪くなってきた。
さっと体の中の血が引いていくような。
体が寒く感じて、熱を奪われていく感覚。


がたがたとそのあまりの寒さに体を抱き、蹲る。


滲みだした視界に、自分が封じた鬼を見た気がした。


―――その鬼と、目が合ったような。


「う・・ぇ・・・っけほ!」


襲う吐き気にバランスが保てない。体が勝手に倒れる。
声を出そうにも首を絞められている気がする。
誰も首をしめてなんかいない。けれど、首が苦しい。
息が出来ない、見えないものが華の首を絞めてくる。



「主様?」


手合せを終えた小狐丸と三日月が畑に華が居ると聞き
様子を見にきたのだが、姿が見当たらない。
遠くからも微かだが楽しそうな声が聞こえてきていたというのに。


「!?・・・っ」


静かになったことに気になった大倶利伽羅が先程声をかけた位置を横目で見やる。
先程まではしゃいでいた小さな体が低まっている。


やはり、何かあった。何故先程気づかなかったのか。
舌打ちし鍬を投げ捨てて駆け寄る。
目にした華の顔は真っ青で、明らかに様子が先程とまるで違う。


「おいっ!?」
「華様!!大丈夫ですか!!」
「ぼ、ボクは薬研兄ぃを呼んでくる!!」


突然駆けだした大倶利伽羅に何かを感じた秋田と乱も駆け寄り、
華の様子をみて慌ててそれぞれ行動を開始した。
遠くから見ていた小狐丸と三日月も駆け寄ってくる。


「主様!!如何された?!」
「・・・?・・・」
「三日月?」
「・・・否、何でもない。秋田、すぐに床を用意させよ」
「わ、わかりました!!」
「大倶利伽羅はそのまま連れて参れ」
「ああ・・・っ」


大倶利伽羅と小狐丸が華を移動させる間に、
三日月はある一点を睨み付けた。


微かに、何か悪意ある気を感じた気がする。


だが、今は何も見えない。華の様子が気になる。
二人に追いつかねばとその場を去る為踵を返した。


見つめていた先で、鬼が笑うのを知る者は、この時まだ居ない。







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