「お出かけしたいところがあるの」


夕餉を終えて、膳を下げに来た長谷部は華の言葉に動きを止めた。
こうしてちゃんと声をかけてくるということは、小狐丸の散策等の
目的ではないだろうと、膳を廊下に出し、部屋に戻る。


「どちらへ行かれるのです?」
「・・・お墓参り」
「!・・如何されたのですか」


よく見れば、華の手には文が握られていた。
震える小さな手、そして告げられた目的。


―――誰が、亡くなったのだろう


「わかりました。供は誰をお付けに」
「三日月と、薬研にぃと、長谷部」


出来れば、早くいきたいから、準備しといてね。




―――――・・・・。



墓の場所は現世にあるらしく、三日月、薬研、長谷部は
刀の姿で同行することになった。薬研は華の腰に下げられている。
三日月と長谷部は、転送門まで迎えにきたある人物が今預かっていた。


「空木(うつぎ)と申します。」


長谷部らにそう名乗った男を、華は知っているようだった。
墓は森の奥にひっそりとたてられていて、手入れはきちんとされていた。
作法は現世のものではなく、審神者が習う方法がとられた。
とはいえ、それほど変わるものではなかったが。


手を合わせて静かに目を閉じている華を刀の姿ではあるが見守る。


「有難う御座います。まさか、墓参りをして頂けるとは」
「お世話になったもん。」
「娘も、喜んでいることでしょう。審神者様に参って頂けただけで光栄です」
「・・・華は、審神者の長に、なれるのかな」
「・・・・何をおっしゃるのです」
「だって・・・華のせいで、死んじゃったんでしょ」


――――椿さん・・・・。


空木は振り返る華に目を見開いた。
まだ幼い華の表情は、大人びて見えて
そう、あの人を思い出したのだ。


前、審神者を―――


「審神者様のせいでは御座いません」


娘は、自分で選び、考えて行動し、その結果がこうしていきついてしまっただけ。

私も報告をうけて状況を整理しました。


書庫にて審神者様の資料を探し、戻る際に鬼に斬られたと。
最後まで、己の責務を果たしたのです。けして無駄ではない。
我々にとって、審神者様をお守り出来ることこそが、幸せなのです。


「ですからどうか、気を病まず」
「・・・」
「これからは、椿に代わりこの空木が審神者様のサポートを致します」
「・・・・・空木さん。じゃあ、おねがい聞いてくれる」
「はっ」


――――絶対に、死なないでね


その時の華の顔を、この場にいた者は忘れないだろう。


それは幼子の顔ではなく


覚悟を決めた、紛れもない長の顔であったのだから。







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