馬小屋の裏では激しい刀剣のぶつかり合う音が響いていた。
何事かと当番をしていた骨喰と鯰尾が裏を覗き込む。


そこにいたのは、まだ本丸に来てそれほど経っていない刀剣男士二人。
一人は小さいけれども体は大きいと言う狐。

もう一人は、政府から華が連れ帰ってきた贋作と言う打刀。


「な、何で本体だしちゃってんの?!」
「・・・わからない。だが、小狐丸が怒っているように見える」


――――・・・・。


きっかけは酷く幼稚なものである。


普段から離れろと叱られる程に傍にいる近侍、小狐丸であったが、
政府内にて検非違使から救出したと華が言うこの男、


名を長曽祢虎徹という。


その男が、小狐丸の定位置(本人曰く)を奪ったという。
長曽祢はそのようなつもりは全くないようで、
しかし華を護れるように距離はそれなりにあけているが
いることが気に入らなかった小狐丸がつっかかったということだ。


と、後程聞くことになるのだが。


「主様の近侍はこの小狐にございます!」
「近侍でなくとも、護ってはいけないことはないはずだが?」
「無論です。主様に何かあってはいけませぬ故」
「ならば刀を向けられる道理はないはず」
「この本丸にいる内は小狐めがおります故!」
「やれやれ・・・難儀なものだな」


いつのまにやら聞きつけた何人かの男士が観戦し声援を飛ばしている。


「おっ、今の長曽祢の動きは綺麗なもんだな和泉守」
「まあなあ。鈍ってなさそうで安心したが、俺も手合せしてぇなあ!」
「だ、駄目だよ兼さん!止めに来たのにっ」
「国広、そういってるがお前も見入ってんじゃねえか」
「うぐ・・・」
「小狐丸も負けてないぞ!真剣なのはちとあれだが」
「まあ、殺しはしないでしょう」


「こらー!!めっ!」
「っ主様!?」
「なっ・・!?」


いつのまに間に入り込んだのか。
両者が刃を交えようとする丁度間に突然華が現れ
見物していた者、そして小狐丸と長曽祢も驚き目を見開く。


まずい、振り下ろす勢いを殺せない。軌道を変えることはほぼ不可能だ。
互いにぶわりと嫌な汗が大量に体中から吹きだす感覚。
誰もがその鋭い刃が華に振り下ろされると思った。


しかし、それは・・・・


現れた青白い光が華を護るように現れ、二人の刃を弾く。
あまりの反動に両者は吹き飛び、地に体を叩きつけた。

「お嬢!!!無事か!!?」
「華様!!!!」


後に駆けつけた鶴丸と前田が叫ぶ。
光りが消えて、ゆっくりと華は立ち上がり
倒れている二人を見てびしっと指をさした。


「喧嘩は、めっ!!」


怒られた・・・怒られた・・・主様に怒られた。


と、小声で呟く小狐丸に黒いオーラが見える気がする。
その様はとても小さく見えた。何人かが駆け寄っていく。

長曽祢は苦笑を浮かべて「すまんすまん」と困り顔。
つい熱くなってしまったと、反省しながら本体を鞘に納めていた。


「お嬢、いきなり転移の札を使うからびっくりしたぜ」
「そうです!いくら何でも間に入り込むなんて・・」
「ごめんなさい。でもね、華の力で止めようと思ったらこれしかないとおもったの」


そう、華が最も得意とする守りの力。
転移の札は政府からもらった支給品なので華の力ではないが、
華の守る力は自身の霊力の強さで決まるもの。
身を護る障壁は華の霊力が高いほどに強固なものになる。


「だからってなぁ・・関心しないぞお嬢。こんな驚きはいらないんだが」
「お鶴。華はね」


二人が華を斬らないと思ってこうしたんだよ?


そう自信溢れる笑顔で言われてしまえば、最早何も言えない。


そして、長曽祢は自ら罰を受けると言い、一週間本丸の掃除係につき
暫く小狐丸は近侍を外され、事態を耳に入れた三日月が近侍になるのであった。



余談だが、華の知らないところで、小狐丸は三日月にきついお仕置きをされたそうな。









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