傷ついた本丸の修復、手入れ部屋に籠る男士。
荒れた審神者の本丸ではあったが、
漸く落ち着きを取り戻しつつあった。


そんな中で、人払いをした離れの部屋で
三日月と小狐丸が対面し、何やら密会をしていると
鯰尾がこそり、というよりも結構大々的に触れ回っていた。


鍛刀にて打たれ、本来時が経てば
審神者の手に触れられて現世に顕現する筈ではありました。
けれども、邪なる手に強制的に引きずり出され、
本来の刀の姿のまま持ち出され、転送門の前まで。
刀の姿では身動きがとれませぬ故、時が運よく経ち
自らの力で転送門を潜りながらの顕現となりました。
即ち、人の身を完全に得たのは山の中でのこと。


故に、彼の鬼のモノではなく、野生として放り出されてしまい
途方もなく山を駆け逃げ延びていたということです。
そこで、今の主様に拾われ、これまた運命と申しますか。
審神者の血を引きし娘子。承諾も頂きまして、
正式な顕現となり現世に足をついたというわけです。


「・・・それは顕現とは」
「いいえ。顕現です。主様の手によっての!」


きっぱりと否定は認めないと言わんばかりに小狐丸は三日月に言い寄った。
己の力で顕現してしまった以上正式な顕現とは言わないのではないだろうか。

しかし抑々顕現とは、等と議論にならない、
ぶっちゃけてしまえば口論の最中に話題の華がやってきた。


「お茶持ってきたの!」
「すまんな」
「主様!!このような狐めに茶等と・・・っ」


持ち前の機動で華の前に行き、盆を受け取り適当に置くや否や
小狐丸は華の手を壊れ物のように握りしめて


「火傷等はされておりませぬか?このような重い急須や湯飲みをしかも二つも!!」
「??重くなかったけ――」
「嗚呼・・お気遣いを!わかっておりまする・・・主様は慈悲深いお方」


本心は重かったでしょうに我々に気を遣い重くなかった等と・・・
この狐めにはわかります。何せ私は主様の初期刀です故


「待った・・・小狐よ。何を戯言を」
「山にて主様は私を抱きしめて下さいました」
「ん?」
「頭を撫で、私に己の霊力を注ぎ込んで下された」


故に、心身朽ちそうになった我が身が修復され、
完全に地に足をつくことができたのです。


「・・・無意識だと思うが」
「無意識であれど!この狐の体には主様の霊力が満ちております」


邪念も何もなく、清らかなる主様の霊力が。


きょとんと目を丸くして小狐丸を見る華に
三日月は内心どこか複雑な心境だった。
しかしこの胸を渦巻くものが何であるのかは
刀の身である自分には、検討もつかない。


それから後に、華の初期刀は小狐丸であるということが
政府から直々に認められることになるのは、この時知る由もないのである。











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