「・・・・?」
「目が覚めましたか」


華が目を覚ますと、そこは小さな洞窟の中だった。
雨はまだ止んでいない。首から肩にかけて痛みが走るが
反射的に触れたそこは布が巻かれていた。
視界に入る狐耳のついたその人の着物が破れている。
恐らくそれをまいてくれたのだろう。


「名を、小狐丸と申します」
「きつねさん?」
「左様です。先は大変に申し訳御座いませんでした」
「元気になってよかったねぇ」


目の前で深く頭を下げる小狐丸の頭を撫でると
驚いたような表情で顔を上げた。


「怒っておられぬのですか?」
「どうして怒るの??」
「この牙で噛みついたというのに」
「むう、怖かったからだよね?だから怒ってないよ?」
「・・・・」


さも不思議そうな顔で見返してくる
その幼い少女に、此方がどうしていいかわからなくなる。
罰を与えて貰おうと思っていたのに。
懐が広いというべきなのか、それとも甘すぎるというべきか。


「して、何故このような場所に」
「・・・!」


目の前の少女が口を開いて、俯いてしまう。
事の経緯を聞けば、ピンとくる女のことを耳にした。
その女は、ひょっとすれば自分を盗んだ女かもしれない。


そう、審神者の長が鍛刀した我が身を、
私欲の為に盗んだ女に―――


「御安心下さいませ」
「わっ!」
「この狐めが、護ってみせますれば」


故に、どうか


「この小狐めを、御傍に置いて下さりませぬか」


少女が目を丸くして、今にもこぼれそうな涙を引っ込める。
そして、小狐丸をぎゅうと抱きしめて


「おいで」


そう、甘美な声で御呼び下さった。



「こまるって呼んでいい??」
「ははっ、何とも可愛らしい呼び方ですな。主様の思うままに」










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