「・・・貴様・・華に何をした!!」


遅れて駆けつけた三日月らが見たのは
転送門を何とか繋げようとする者。
高笑いをし狂気を孕んでいる過去に殺した筈の女の姿。


そして・・・・


「殺せ!ワタクシの命を聞かぬ者など折ってしまえ!!」
「国広!!やめろ!!!目ぇ覚まさねぇか!!」
「・・・・・」
「秋田!!お願い止めて!!!」
「何故この刃を、愛しき弟に向けなければならないのかっ!!」
「・・・どうなってんだ・・・こいつぁ・・・」


赤黒い気を纏った堀川と秋田が無表情で親しい者らに
本体を抜いて襲い掛かっている光景など、
誰が想像できようものだろうか。
和泉守が本体をぬいて堀川の刃を受け止めに走る。
粟田口の面々は戸惑いを隠せず普段の動きが出せていない。
それもそうだろう、刃を向けるのを躊躇うのも理解できる。
だが、甘いことを言っていられないのも事実だ。


この場に華がいないこと、転送門を開こうとしていること。
それだけで誰に何があったかなど容易く把握できるが
これを三日月は女に問い、吠えずにはいられなかった。
あの日誌を読んだ後、それ以前からも華を孫のように
可愛がっていたが、今は己の娘なのだ。冷静でいられるわけがない。


「・・・ふふ。三日月宗近・・」
「どこへやったのだ・・・何故貴様が生きている!」
「過去に一度だけ会ったことがあるが、今でも美しいな・・」
「答えよ!!女っ!!!」
「”厚樫山”へ放り込んだのだ。今頃は餌食になっているだろう」


転送門へ突き飛ばされたところを見ていた男士は
同じ疑問を浮かべていた。確か華が入ったときに
表示されていたのは、「墨俣」だ。
だが、この女は今確かにはっきりと「厚樫山」と言った。


食い違う言葉に疑問をもてども、どこであれ華の命が
危ないということには変わりはない。


「堀川!!」
「・・・・ッね・・さ・・・」


兼・・・さん―――


確かに、堀川の口から兼定の名を呼ぶ声が聞こえた。
同様に、秋田も兄弟を呼んでいるようだ。


「国広!!?」
「・・・し、・・て・・・」
「いち・・・兄・・・み・・んな・・・ッ」



――――僕を・・・殺して下さい


二人の言葉に、対峙している者の動きが止まる。


今、何と言ったのか。



「馬ッ鹿!!!出来る訳ねえだろ!!!!!」
「そうだよ!!堀川!!!」
「・・・いや・・なんだ・・・・っ僕の手で・・・兼さんや・・・みんなを・・・っ」
「いち・・兄・・・ぼく、も・・・いや・・・ですっ!!!」


支配は解けていないが、意識だけは何とか此処へ戻した
二人の本体を握る手が、震えている。


頬を濡らす滴が遠慮なく地面に落ちていく。
己を止めることが出来ない。親しい仲間を己の手で傷つけてしまう。


なればいっそのこと、どうか折ってくれ。
この手で傷つけるくらいならば、殺してほしい。


「何故いうことを聞かぬ!!!この本丸は今日よりワタクシのモノ!!」
「・・・ぐ、あ・・っ!!!」
「国広!?やめねぇかてめぇッ!!!!」
「いた・・い・・・っ・・・痛い・・ッ!!」
「秋田!!!」
「まだ死なぬのか!!!あの餓鬼め!!!!」


そうだ、この女の支配を受けていないということは
まだ、華が生きているということだ。
女の憎悪の狂気に囚われている堀川と秋田を
まだ救うことが出来るはずだ。


堀川と秋田の目は、赤く染まりつつある。
完全に囚われるまで時間がないようだ。
和泉守の左右に、清光と安定が立つ。
一期の前には、兄弟達が本体を抜いて立った。


「お前ら・・・?」
「・・・間違って首落とすなよ?安定」
「・・わかってる。でも気絶させるから首は狙うけど」
「折らない程度に、止める。わかった?兼定」
「多少怪我させるけど、華にしっかりお手入れされるといいよ」
「・・・・そう、だな」

「お前達・・・」
「秋田は俺達の大事な兄弟だ!」
「だから、ボクたちで止めてあげなきゃ」
「秋田の気持ち、痛いほどわかります」
「僕ら粟田口兄弟は、いつでも一つです」
「・・・いち兄。いこうぜ?」
「薬研・・・皆・・・わかったよ」


審神者の屋敷に、響いたのは刃の交わる複数の音。











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