「じっちゃん。ちょっといいか?」
「構わん。何用だ獅子王」


縁側で囲碁をしていた三日月の元へ獅子王が駆けてくる。
歌仙が扇子で口を覆いうんうんと唸っている様に
苦笑を浮かべて、口を開いた。


「華には両親はいないのか?」


ぱちん!


碁石を置く音が響いたと同時に固まる二人。
獅子王は首を傾げて様子をうかがっている。



そうだ。審神者から両親のことを一度とて聞いたことがない。


これは、不自然ではないか?


「歌仙は知らないのか?審神者の初期刀だろ??」
「あ、ああ。・・・そういえば、急に連れてきたんだったかな」


暫し現世に用がある故に屋敷を離れると
審神者が突然姿を消して、戻ってきたらその傍ら


華がいた。


「私の、孫です」


こう告げた審神者の顔がどんな表情をしていたのか記憶にはない。
孫を連れてきたというよりも先に、そうだ。


審神者が歳を取って戻ってきたことの方が
屋敷にいた男士らを何よりも驚かせたのだ。


三日月も思うところがあるのか固まっている。
まさか彼でも知らないのかと歌仙が驚いていた。
彼は審神者の全てを知っていると思っていた。


それだけ、近くにいたのだ。
初期刀として選ばれた自分も審神者にとても良くしてもらった。
互いに舞いを教えたり、風情を語り、共に戦った。
思い出せば自然と懐かしさに笑みが零れるのに。


華のことは、知らない。


自然といることが当たり前になってしまっていたのだ。
この日々が当たり前の日々なのだと。


「・・・歌仙よ」
「何かな」
「・・・・審神者の記録を、探るぞ」
「記録を?・・・何を考えて―――」
「否、審神者もそうだが、気になることができた」


華のことについて。
そして前審神者について。


そもそも一度とて、両親の顔を見ていないことは
どう考えても不自然すぎる。そして華も口に出さない。


まだ新しい記憶の中にある、審神者屋敷奇襲事件。
その時に斬り殺した女が審神者を母と呼び
女は華を産み落としたといっていたはず。


しかし、何かひっかかる。


背後で獅子王と歌仙が呼ぶ声がしたが
三日月は振り返らず、審神者の部屋に歩を進めた。










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