※0はおまけです。
読まなくても問題ないですが
2章での0は読んだら内容がわかります。
補足みたいなものです。



記憶が戻っていたことに気づいていた男士が一人だけいた。
そのことが明るみに出るのは、先の話なのだが。


蔵の裏側で一人蹲る華を見つけたのは、
喋る狐、鳴狐の供である。
勝手に肩から降りて駆けて行った狐を追ってきて
偶然その場に居合わせたのがきっかけだ。
具合が悪いのならば薬研を呼びに行こうとしたが
服を掴まれて身動きが出来なかった。


「なき・・・だいじょうぶ」
「!・・・華」
「今鳴狐をなきと!記憶が戻られたのでは!?」
「・・・なき、おねがい」


皆には、言わないで?


華の言葉の意図が読めない。
しかし、今は休ませねばと華の体を抱いて
近くの木陰へ移動した。狐も後ろをとてとてついてくる。


手を離させようとしても頑なに離さない。
どうやら自分が首を縦に振らない限り離してはくれないようだ。
記憶が戻ったのならば、皆に話せば喜ぶことだ。
しかし、何故それを良しとしないのだろう。


「・・・どうして?」
「・・・だから」


小さな声だったが、鳴狐はしっかりとその言葉を拾っていた。


約束だから、と。


政府の者に口止めされているような様子ではない。
ということは、ここまで頑固になる理由は一つだけだ。


審神者との約束なのだろう。


しばらく華と見つめ合い、おろおろとしている狐を撫でる。


「わかった・・・」
「!・・・内緒、してくれる?」
「・・・内緒。」
「な、鳴狐!何をいっているのですか!このような大事なことをっ」
「華が、内緒というのなら、内緒だ・・・」
「・・・なき。ありがとう・・・」
「そのかわり・・・なきとも、約束、して」
「むう?なあに?」


ぎゅう、とまだ震えている体を安心させるように抱きしめて。
手を繋いで、ぼそぼそと耳元で約束を呟く。


「なきにだけは、何でも、話してね」
「なんでも?」
「そう・・・皆が知らないなら、不便もあるだろうから」


華が困らないように、華が頼れる場所があるように。
そう願いながら、鳴狐はぽんぽんと頭を撫でた。


拠り所を作ったはずだった。それなのに・・・










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