心地の良い日を浴びながら、
獅子王は一人屋根の上で寝転んでいた。
危ないから降りるようにと、
審神者から言われていたのが懐かしい。
瞼を閉じると、声が聞こえてくる気がして。


今でも、まだ実感が沸いてこないことがある。
恐らく、自分だけではないと思う。
この屋敷の刀剣男士らにとって、前審神者の存在は大きすぎた。
背は自分たちよりも低い、普通の人間の女性だというのに。
そういえば、ふと獅子王の脳裏に疑問が沸いた。


審神者を婆様と呼ぶようになったのは、何時からだ?


この場所は時の流れが現代と違う。
それはまだ新しい記憶にある、孫様=華拉致監禁事件で
はっきりと思い知らされたことだ。
刀に戻っている間に、背も伸びていて、髪も長くなっていた。
自分たちにとって、たしか4日程のことだったが。
華は向こうで4年程すぎていたと聞いた。

しかし、此方の一日が向こうの一年になるというわけではないらしい。
そこは、自分にはよくわからない領分だ。
此方に戻ってきた華が元気ならばそれでいい。
皆から様がきえて、妹のように、中には娘のように


刀である自分たちに、温かい家族という形を教えてくれた
審神者と、華に感謝したい。そして、とても愛しく思う。
これで記憶も戻ってくれれば、何も言うことはないのだが。


色々と考えていたら、いつのまにか暗くなっていた。
最近日が落ちるのが早くなったなとぼんやり思う。
遠くで自分を捜す声が聞こえる。長く屋根にいすぎた。


軽々と飛び降りて、声のする方へ向かえば
総会という集まりに行っていた華が
平野と前田と一緒に帰ってくるそうだ。


出迎える準備をしようと、意気揚々と向かう中で、
前審神者のことを考えていたことを、
すっかり忘れてしまっていたのであった。









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