「総会、ですか?」
「はい、次期審神者様であられる華様にも参加して頂きます」

華の記憶は変わらず戻らぬままであるが、
それでも記憶が封印される前までいかなくとも
刀剣男士らとの関係は余所余所しさがなくなった。
平和な日々が続いていた審神者屋敷に、
定期で来る筈の椿が火急の知らせがあると訪ねてきた。


近侍である長谷部が応対にあたり、
その傍に三日月が腰かける。
皆、完全に信用している訳ではないが
定期で華の様子を窺い、着物の世話や
諸々を甲斐甲斐しく受け持ってくれるのを見ているので
本体に手を添えることは少なくなった。


そして、話を戻せば椿から出た言葉は
「総会」という単語だ。
確か、亡くなられた審神者も時々行っていた筈。


「新人から、長である審神者様まで集まるものです」
「ですが、華様はまだ」
「わかっております。ですが、出ないという訳にはいきません」


華様は審神者の中の長になられるお方。
筆頭がいない総会には意味がないのです。
そして、二派閥も総会への参加を要請しています。


「簡潔にいえば、華様の確認をしたいのでしょう」
「確認、と言うと」
「どれほどのお力を持っているのかです」
「・・・・・。」


三日月は扇子で口元を覆いながら、視線をどこかへ移ろわせている。
思考が読めないのはいつもの事だが、長谷部はどうするべきか悩んだ。
こればかりは刀剣男士の誰であろうとも、止めることは出来ないだろう。


「近侍の人数は長である華様の判断にお任せします。」


他の審神者は一名の刀剣男士の護衛を連れられます。
場は安全を考慮されていますが、万が一も考えられますので。


「次期審神者であられる華様には権力を象徴して頂いた方が――」
「難しいお話???」
「!華様」


障子が開き、視界に入ったのは屋敷の小さな主。
遠ざけていた話の中心人物が此処へ来てしまった。
にこにこと笑っている華様に長谷部は
総会へ行ったときにどうなるのかと思案していた。
今の華様はまだ幼すぎる。故に錬度の高い刀剣男士を
護衛につれていき、その者を見せて権力を象徴しておいたほうがいい。
椿の意見は尤もである、そうなれば―――


そこまで考えていた長谷部は、華の後ろの影に気づいた。


「前田、平野?」
「椿さん。そーかい、前田くんと平野くんといっしょにいくからね」
「な・・・」


唖然とする二人、笑みを絶やさない華。
真面目な表情の前田と平野。


それを、目を細めて無言で見つめる、三日月。


権力の象徴、そして万が一の護衛ができる者ならば
三日月、鶴丸等がいいだろうかと考えていたのに。
何故この二人なのだろうか。無論二人が弱いというわけではないのだ。
信頼もしている。信用もしている。だが、何故?


「華よ」


ぱちんっと扇子を閉じて、三日月は微笑んだ。


「総会、気を付けていってくるのだぞ?」
「はい!」
「平野、前田。頼んだ」
「全力を尽くします」
「護って御覧にいれます」


――――そして、その日はやってきた。


多くの審神者と、その護衛の刀剣男士。
新人の審神者には初期刀の男士が傍にいることが
多いので見分けがつきやすい。
そこそこの経験を積んだ審神者は太刀が横に控えている。
中には短刀もいたりするが、皆注目しているのは
未だ空席の、審神者の長の椅子だ。


前審神者の長は亡くなったということも
今は孫が次期審神者の長候補であることも
総会の場にいる者全て周知のことであった。


「審神者長、御成り」


ざっと、誰もが綺麗に頭を下げる。
政府の者らも、他の審神者も全て。


からんころん、と静まり返った会場に響く下駄の音。
ずず、と椅子を引かれてそこへ華は座った。
鮮やかな朱の着物には白い華の刺繍が施されている。
他の審神者らよりも高い位置の席。
全てを見下ろすかのようだ。
華の左に前田が、右に平野が控えた。


総会の進行を務める政府の男が、着席を促した。
頭を上げた審神者らから、ひそひそと声が漏れる。
皆、華を見て、その幼さに驚愕しているのだろう。
そして、長となるこの審神者の左右には
護衛として短刀が控えているだけだ。
前審神者は三日月を所持していた故に、
誰もが彼を従えてくるのだと思っていたようだ。


平野と前田も、まわりの「何故あのような短刀が」
「あの審神者候補が長になれるものか」等の
声を漏らさず聞いているのだが、眉一つ動かさない。


その顔は、誇りに満ちていた。


政府の者らは、その様子に感嘆の息を吐いた。


「あの幼審神者、中々の者と見た」
「嗚呼。やはりあの力、何としても・・・」


政府の者らの一部は意図を理解したのだ。
何故華が太刀や大太刀ではなく、
短刀を護衛においたのかを。


「前田と平野か・・・」
「幼審神者の傍におる二人、錬度も高いな」
「否、アレは錬度が低くても二人を選んだだろう」


平野と前田は、戦場ではなく
主君の傍で、護る戦の専門である。
つまりだ。この場は「総会」であり、
政府の用意した場で安全は勿論対策している。
仮に敵の侵入を許した場合、それは政府の失態である。


「あの幼審神者、まさか・・・」


この場に負の者が来ることなどありえないのだから。
自身の最高の世話を出来る者を連れるだけでいい。

短刀と言えど、審神者の長の短刀。
命を守れない訳がない。


「とでも、言っているのか・・・」
「まさかな。幼子だぞ、そこまで賢くないだろう」


椅子に行儀よく座り、にこにこと
誰がみてもただの子供を見て、
政府の者らは溜息を吐いて総会を開始した。
総会は夕方まで続き、華らが
屋敷に戻る頃には夜になっていた。










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