審神者がお亡くなりになり、そして華様が此処
屋敷へ帰還なされて幾日か経った。
この場所では時はゆるりと流れる故か、
外見はまだまだ幼い、しかし日々成長される様を
見守ることは、心を穏やかにしてくれる。


刀であり、主に戦場ではなく神社での政に
励んでいた故に、この日常にも慣れたものだ。
今日も戦にでる者を祈り、加持祈祷に励む。

主に石切丸、太郎と次郎は祈祷場で過ごす。
次郎が酒を煽ればそれなりに賑やかになるが
普段はとても静かな空間だ。


そんな空間で、珍しく声が響いている。


「何をしたのかわかっているのかい!」
「・・・ごめんなさいっ」


そして珍しくも、その声の主は普段怒ることが少ない
石切丸であることも、声を聴きつけた短刀達は珍しがっていた。
小さく今にも泣きだしそうな声で謝るのは、華だった。


「い、石切丸さん・・っぼくが悪いんです!」
「五虎退?」
「と、虎君が屋根に上って、そこの木に飛び乗ったみたいで」
「降りられなくなったみてえだから梯子を取りに行ったんだよ」
「厚・・・」
「そしたら、いつの間にか華が木登りしててっ」


なるほど、虎を助けようとして木に登り、
その枝が運悪く折れて私の上に落ちてきたというわけか。
だが怒っているのは私に落ちてきたことじゃない。


「華、私がどうして怒っているのかわかるかい?」
「・・・っひっく・・・祈祷場の、木のえだを・・・おっちゃったから?」
「違うよ、心配したからだよ。私が下にいなければ地面に落ちて大怪我をしていた」


そんなことになれば心臓が止まってしまう。
怪我がなくてよかった。けれども無茶をするのはよくない。


「ちょっと石切丸〜、華ちゃん泣いちゃってるじゃないか」
「次郎。また飲んだな」
「そんなことより、華ちゃんを褒めることも覚えなさいよねえ」


華は女の子なのに木登りが出来るんだよねぇ、凄いわね!


次郎の言葉に誰もが目を丸くしていた。
説教で張りつめた空気になっていたのが一気にがらりと変わったのだ。


まあたしかに危ないことをしたのは悪いことだけども、
華はただ虎を助けたかったから行動しただけ。
怖いだろうに頑張って一人で木に登ったのは凄いことだと。
頭を撫でながら、でもやっぱり無茶はダメだかんね?と
優しい声色で次郎は華を説き伏せた。
華は素直に頭を縦に振って理解していたようだ。
その様子に、石切丸は溜息を吐くしかできない。
呆れているのではない、自分も心配しすぎて強く叱りすぎたかもしれないと。


「石切丸」
「わかっているよ。いいかい?今度からは誰かに声をかけるんだよ?」
「ごめん、なさい」
「うん。華はいい子だ」


ぽんぽんと頭を撫でてやると、華はぎゅうっと着物を掴んで
素直に謝ってきた。それに、やはり自分も甘いなと思いながらも、
小さな体を抱きしめて、背中を優しく撫でてやった。










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