今日の内番は大倶利伽羅と二人で畑の当番だったはずだ。
それなのに彼ときたら、勝手にどこかへ消えてしまっていて。
溜息を吐きつつも与えられた仕事に光忠は精を出す。


しかし、彼は昔審神者と一悶着起こしてから
素直に内番や遠征等、仕事はきちんとこなす男であったはず。
故に、今回いなくなっているのもさぼりではない筈だ。
だから、こうして一人で雑草をぬいているのだが。


「やれやれ・・・」


一人で仕事をするのは、やはり疲れる。
二人でやっても結構な広さなのだ。
今の内番は、主にサイコロで組をつくり
あみだくじで決めている。故に、完全に運だ。

審神者が御存命の時は、しっかりと計画をたてて
それに従って仕事が与えられていたのだが。
こればかりは仕方がない。今、審神者は次期審神者しかいないし
その次期審神者は人間の幼女である。成長するまでは審神者ではない。
しかし、この本丸にいる男士の中に、華様を審神者と
認めない者はいないと思っている。


「ん?・・からちゃん?」


ふと、視界に見慣れた男の姿があった。
それほど遠くに行っていなかったのか。
たしか、あそこは蔵へ行くための小道がある場所だ。
あんなところで何をしているのだろうか。
休憩がてら、様子を見に行こうと思う。


「からちゃん、何し―――」
「光忠、黙れ」
「ちょ、いきなり黙れはない・・・だ、ろ・・・・あっ」
「・・・・・・」



今倶利伽羅が視線だけで語りかけてくる。
長年の付き合いだ。何を言っているのか理解するのに
それほど時間はいらなかった。


起きたら殺す。


これだ。

幸い華様は起きなかったので一安心だ。


「・・・・華ちゃん?」
「・・・・・」
「なんでからちゃんと一緒なの?」
「・・・・・そこで、寝てた」


指をさす場所に視線をむけると、
そこには白い虎と、狐が丸まっている。
どうやら小さき獣たちと一緒に
遊んでいて眠ってしまったのだろう。
しかし庭で寝てしまうのはいただけない。


「でも、よく畑仕事してて気づいたね」
「・・・・・・ふん」
「ふふ、からちゃんらしいな」
「・・・・・」


そう、たしか昔も審神者に監視を頼まれていた筈だ。
離れたところから静かに見守ってやってくれと。
そうして彼は、嫌な顔もせずに、静かに遠くで見守り。
そして、転びそうになったり、または危ないことをしようとしたら
静かに近づいて、静止したり、助けに入ることがよくあった。


慣れ合うつもりはない、などと言いながらも。
彼はどういうわけか、華様には甘い所があるように見えた。
まあさすがにこれだけ小さな女の子にまで冷たかったならば
光忠直々に色々とお説教をしてやるつもりではあったのだ。


「記憶がなくなっても、寝顔は同じだね」
「記憶がないと、こいつは他人になるのか」
「え・・・・」


記憶があろうがなかろうが、
こいつはこいつで、俺達の審神者になるんだろう。
だったら、今までと何も変わらん。


まさか彼からそんな言葉が出てくるとはと、
驚きのあまり、言葉が出なかった。


そうか、確かに、何も変わりはしない。
どうして、そんな簡単なことに気づけなかったんだろうか。
何が変わったのか。かわったのは華様が、華ちゃんになっただけ。


何も、他には変わっていない。


「何か、かけるものをもってくるよ」
「・・・・ああ」


ほらね、背を向けて離れようとしたときに感じた
布擦れの音、ちらりと視線だけむければ
自分の上着をぬいでかけてやっている姿。


やはり、彼は華様には甘い、静かな護り手である。










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