想定していた通り、政府の者が屋敷へやってきた。
戦闘の覚悟もしていたのだが、どうも様子がおかしい。
大勢で来ると思っていたのだが、相手は一人。
政府の服を着ているが、武器は見当たらなかった。


「武器をどうか納めて下さい。戦闘の意志はありません」
「信ずる証拠がない。故に下すわけにはいかない」
「尤もです。でしたらこのままでお話をさせて下さい」
「・・・!椿さん」
「孫様?」


部屋に隠していた筈の華が駆け寄ってくる。
華から出たのは相手の名前だろうか。
椿と呼ばれた政府の者の服の裾を掴んで見上げる。


「・・・武器を、おろして?」
「・・・・主命とあらば」


皆がゆっくりと、刀を納めた。


「名乗るのが遅れて申し訳ない。私、あちらで世話役を担当していた椿と申します」
「椿さんは、怖いこととかしない人だよ」
「お話させてほしいのは、政府の事です。」


以前、審神者の葬儀の際にお孫様を連れた者達は、
政府の上層部、二つの派閥の内の一つです。
現世は2205年。ですがこちらの世界は特殊な世界。
最初の審神者の血を持つ者を保護する空間であることは
御存知であるかと思います。

そして、審神者の血を保護する心酔派。
審神者の保護を名目に、審神者を操作しようとする暴政派。
酷い話が、今はこの二つの派閥に権力者が集中しています。
勿論、真に世界を思い、審神者を保護したいとする者もおります。
残念なことに、その中に強い権力を持っている者がいないのが現状。


「今回、審神者が亡くなられたことで、幼いお孫様が引き継がれます」


審神者の儀を行える12の歳になられるまでに
暴政派が教育し完全に実権を握ろうとした結果が、
今回の誘拐ということになります。


「私は、世話役として孫様に近づき、暴政派から護る任務を密かに遂行していました」
「あんたのことは、本体の時に何度か見たことがあるな」


薬研が柱に凭れて目を細める。
たしか、着物を着せ替えるとき、
湯あみをさせるときにちらりと見た筈だ。
嘘を言っていないことがわかり、少しずつ
皆の警戒が解けていく。しかしまだ油断はしない。


「そして、今回のお孫様を屋敷に戻した件」
「暴政派の者がくるのではないか?」
「心酔派に事がばれたことで、此処へは暫くこれないでしょう」
「内部で荒れているのは好都合、といっておくべきかな」
「お孫様は此方の屋敷でこれからまた暮らして頂きます。」


私は監視の名目で、定期的に此方へ足を運びます。
いくら神とはいえ、お孫様はまだ8つ。
さらに女子の身ですので。
それをお許しいただけるように、此方へ参りました。


「どうか、許可をいただけますか?」
「・・・・」
「椿さん、きてくれるの?」
「皆さまが許して下さるならば」


記憶の封印が解けるのにも時間はかかるでしょう。
その間、そして12までの間。


お孫様を護ることは、出来ますか?


皆が顔を見合わせる。
だが、思うことは一つしかない。


「審神者の大切な宝、護るのは当然のことだ」
「それに、儀はまだであっても、この方は」


我々の新たな、審神者であるのだから。


椿は微笑み、華の頭を撫でてから一礼し、この場を後にした。










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