閉じ込められた部屋の中には、
乱雑に書物が散らばっていた。
そこには、子供が読むには難しい内容が
びっしりとつまっている。

簡単に言えば、兵法の記載されている物。
歴史の記された書物等様々だ。


連れられて繋がれた時に着ていた着物も小さくなり、
新しい大きさの物を着せてもらっている。
しかし、それも埃や汚れでよれていたり見た目は悪い。


―――折角の着物が汚れてしまったね、大丈夫ですよ。


頭の中で声がした気がした。


けれど、すぐに消えて。


4年の歳月が流れた間に、失ってしまったものが多い。
毎日毎日、政府の怖い大人がやってきて、
封印とか何とか言いながら頭を触っていった。
その影響か、忘れてはいけないものが思い出せない。
思い出そうとすると、頭が痛くなる。


今日は、やけにお外が騒がしい気がする。
普段声も聞こえてこないのに。
窓から微かに叫ぶ声がきこえてくるような。


ガチャ・・・。


「?」


鍵を触る音がする。
食事の時間でもないし、
怖い政府の大人がくる時間でもない。


―――誰?


政府の大人が取り上げようとしても
何故か離れず傍にあった短刀がカタカタと震える。


「・・・・――ね」
「兜割ったみたいにさ、鍵も―――」
「一緒にすんな」


声がはっきりしてきた。
鍵を、ひょっとして壊そうとしているのか。


「しょうがない、私がやろう」


我が刃は、岩をも断つ!!!


ガツン!!と、大きな音がした。
眩しい光が差し込んでくる。
埃が舞うこの部屋に、何人かの人が入ってくる。


「御無事ですか!!孫様!!」
「・・・まご、さま??」


私の名前は、まごじゃないよ?


「だあれ?」
「!・・・っ俺です、長谷部です!」
「・・・はせ、べ?」
「何か術を掛けられているようだ」
「今は連れて帰るのが先だろ」
「そうだな、同田貫。護衛を頼む」
「ああ、孫様任せたぞ長谷部」
「後で和泉守の部隊と合流しよう」


隙をついたとはいえ、政府の管理している空間だ。
繋がれていた鎖を断ち切って、石切丸は優しく頭を撫でて
華の体を軽々と抱き上げてくれた。


「・・・どこ、いくの?」
「此処は良くない気が満ちているからね。屋敷に帰りましょう」
「でも・・・怒られる、かも」
「怒られませんよ。帰るだけですから」


怒ろうものなら圧しきると聞こえた気がしたけども
たぶん気のせいだろう。


部屋の外の景色は初めてみた。
人の気配はない、政府の大人はいないのだろうか。


「さすが孫様だ。傍にいらっしゃるだけで神器が反応している」


庭園に紫色の渦が現れて、その先には
何故かとても、懐かしいような。
どうして懐かしいと思うのかわからないけれど
涙が溢れそうになる、屋敷が見えた。


今、一つだけわかるのだとしたら。


―――帰りたい。


これだけた。


「さ、帰りますよ」
「和泉守!引き上げるぞ!」
「おうよ!!」


庭園から、渦は消えた。











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