※0はおまけです。


審神者がまだ若かりし頃。


縁側に暖かな日差しが降りてくる。
審神者の部屋の外は完璧に掃除がされている。
長谷部が毎日廊下から隅々まで綺麗にしているので
まず汚れることなどないだろう。

そんな縁側でのんびりと茶を飲んでいる審神者。
政府からの書類の処理が終わったようだ。
降り注ぐ日差しは夏の日差しから秋に変わり
少しだけ肌寒い風が混ざるようになった。

あの時の審神者はまだ自分の足で歩くことが出来た。
髪も、白ではなく黒髪で。


「主!お仕事終わったんだ」
「清光。ええ、終わりましたよ」
「今日の菓子も、おいしそうだね」
「ふふ、ええ。歌仙が今日は作ってくれました」


嬉しそうに笑う主の顔は、今でも覚えている。
そういえば、主の怒る顔はあんまり見たことがなかった。
怒られたのは出逢ってそれほど間もない頃だ。


愛されたくて、捨てられたくなくて。
傷を隠しながら戦場に行っていた。
それがばれて、見たこともない剣幕で怒られたっけ。
でも、あれも怒っていたんじゃなくて、
泣きながら心配したって言われて。
主を泣かせてしまったこと、俺が心配しなくても


この主は絶対に、捨てたりなんかしないって
安心することが出来たんだ。


こうして、遠征や戦場からの帰りには
主のいる縁側に足を運ぶようになったんだ。

微笑む主を見ていたら。
何故か、無性に甘えたくなった。


「主ー。」
「どうしたのです?」
「・・・てやぁ」
「おやおや。清光」


ごろりと、主の膝に頭を乗せて。
所謂膝枕というやつだ。
うん、やっぱり主の膝はいいよね。
本体の手入れをしてくれるときに乗せてもらうことがあるけど。
なんていえばいいのか、心地がいい。


「ちょっと、何してるの」
「安定。貴方も帰ったのですね」
「はい。畑は今日も問題なかったです」
「邪魔しないでよ安定。今俺手入れ中なの」
「手入れなら手入れ部屋いけば」
「いやだー。どこも壊れてないしー」
「じゃあ膝枕いらないじゃない」
「ふふ、こらこら、喧嘩は止めなさい」


そして微笑んで、反対の膝をぽんぽんと軽く叩いて。
安定に「おいで?」と手招きをする。
本当に、この主は優しすぎる。
戸惑った顔をしてる安定も、何だかんだでやっぱり同じだ。
俺達は考えることがだいたい似ているんだから。
「主がいいなら・・・」なんて言ってるけど
本当は俺がうらやましくて睨んでたのは知ってるんだからな。


「二人は甘えたさんだ」
「いいもん。愛されてるんだから」
「・・・そうだね」
「ふふ・・・本当に」


二人は子供のようね。


そういった時の主は、まだ若かった。
見た目は俺達よりお姉さんって感じだったからか。
余計に、甘えたくなった。


それが、月日が流れて。


縁側から、主の姿が消えるなんて。
この時はまだ、全然想像なんて出来なかったんだ。


そんな、ある日の思い出。











×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -