一つずつ、記憶が消えていく。


毎日、毎日。真っ暗なこのお部屋で。
誰とも話をしない。誰も来てくれない。
顔に布を付けた、政府の人が
お食事を持ってきてくれるだけ。


蜻蛉のおじちゃん。

からちゃん。

みつ。


皆が、此処にいると消えていく。


誰だっけ?ねえ、教えてよ。


かせん。・・・かせんてだあれ?


みだれちゃんなんて、知らない子。


嫌だって思っても、泣き疲れて目を覚ますと、
皆がいなくなってるの。


皆?・・・・みんなって??


「ばっちゃ・・・」


どうしたらいいの?


何故か傍を離れない短刀。


難しい漢字だけど、唯一読めるよ。


「やげん・・・」


あ、・・・・知ってるかもしれない。


でも、また消えてしまったら?


――――大丈夫だ。華。


「?・・・だあれ?」


どこから、声がするんだろう?


唯一お空がみえるくらいの、小さな格子窓。
そこから聞こえた気がしたから、見上げてみた。


外に見えたのは、綺麗な三日月。


・・・・みかづき?


「・・・知ってる・・・のかな」


何度も口にしたことがある気がする。
空に浮かぶものじゃなくて、


そうだ、名前だったはず。


―――言ったであろう、華



覚えておれよ、と。



あれは負け犬の言葉ではない。


連れられる華へ向けた、願いだ。


「みかづき・・・・っ」


いやだ。忘れたくない。


そうだ、知ってる。これはただ、記憶を隠されているだけだ。


大丈夫、忘れたりなんてしないよ。

だって・・・。



皆は大切な、家族なんだもん。



―――そして、華が監禁され

此方の世界では、四年程の歳月が流れる・・・――――










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