「どうしよう・・・」


三日月と小烏丸を刀解しようとしに
悪い人達が来ているのに、敵が追いかけてくる。
転送門には結界が張られている気配がするし
本丸に戻ってきてしまったのは間違いだったのかな。


「そうざも・・・にせものさんだった・・・」


一緒に行ってくれるって言ったのに
やっぱり行かないって言ってた。
そうしたら敵の姿になっちゃったから
隣にいたあおえもそう。


本丸にいる皆も、そうなのかな?
右手に握りしめた刀に覚えなんてないし
けれども、離すことは出来ない。

いつのまにか腰にくっついていた脇差だけが
優しい光を出しているように見えた。


「華ちゃん!!やっと見つけたよ!!!」
「みつ?・・・っ」


違いますよ、あれも偽物です。


頭の中で声がする。心配そうな顔を安堵に変えて
こちらへ駆け寄ってこようとしている彼も

華に嘘をついているの??


ほら、良く見て下さい。
彼は、本当に燭台切光忠ですか?


「っこないで!」
「え・・・華ちゃん?」
「みんなをどこにかくしちゃったの!!」
「華ちゃん!僕だよ?落ち着いてッ!!」
「いやだよぉ・・・みつをかえしてよぉ!」


首を横にふって距離を取る華は酷く怯えていて
その腰に下げられた脇差から放たれるのは、
一見して良くない色の光だ。
それに、華に纏わりつき始めた骨も嫌な汗を流させる。
あの可愛らしい瞳が朱いことに、光忠は困惑の色を見せた。
彼女の足元の植物が枯れていく。見慣れない刀を手にした腕に
遡行軍の骨が絡みついていて、あれでは刀を離せないじゃないか。


「大倶利伽羅!!華ちゃんの様子がおかしい・・・注意して!」
「・・・・わかっているッ」
「!?・・・やだあ!!」
「くッ・・落ち着け!」


光忠に気を取られていた華の背後に回っていた
大倶利伽羅が逃がすまいと手を伸ばしたが
気づいた華が結界を張ってしまいその手が弾かれた。


完全に拒絶を表している。
華からこれほどまで拒まれることなど、なかった。


「からちゃんを返してぇ・・ッ・・・!!」
「・・・ッおい」
「・・・今の俺達は、敵さんに見えているらしいぜ」
「鶴さん!」


いつもの笑みはなく、冷めた表情で刀を担いで現れた鶴丸に
二振りはどこか恐怖を感じた。それもそうだろう。

彼の華を見る眼が、こんなに冷たかったことなど一度もないのだから。
しかし、それは二振りの誤解であった。鶴丸の眼差しは華ではなく
その腰に下げられた脇差に向けられていたのだから。


「可哀相に・・・お嬢・・・」


泣くのを必死にこらえて、俺達を探している。


―――まるで、迷子のようだ。


怯えて訳が分からなくなっているところに
恐らくはその腰の脇差が何かしているんだろう。
俺達が遡行軍に見えるだって?そんな驚きなんざいらない。


俺達をかえしてくれと叫ぶ幼い主。


「やってくれるじゃないか、悪いが俺は、優しくねぇぞ・・・」


一気に踏み込み、結界があろうが構うものかと刀をぬく。


「華を、かえしやがれぇッッ!!!!」
「鶴さん!!!?」
「国永ッ・・止せ!!!」


バチバチと刀を弾き返そうと結界が音を鳴らす。
苦悶の表情を浮かべつつ、鶴丸は退こうともしない。

押し破って見せる!!


目の前にいるというのに、届かないなんぞあってたまるか。

もう、俺は・・戻る事なんざ出来やしないんだ。


大切に思うモノを、二度と失うことが


今の俺には、命を奪われる以上に、耐えがたい。


ずきりと左足が痛みを走らせるが、それさえもどうでもいい。


「国永・・・まさかお前」
「足の怪我がっ!?」




わりぃが、こっからはお嬢を、頼んだぜ?


ガラスが割れるように、結界が破れて。
目を見開いてその朱い瞳が俺を捕えていたが


すまんな、お嬢。


暫く、起きられそうにない。

だから、俺を起こしに――――



――――帰ってきてくれないか?










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