カタカタと骨の揺れる音が下駄の音に混ざる。
華の瞳に浮かぶ三日月は消えてまた浮かび
時折赤く染まり戻るを繰り返す。

三日月が瞳に戻れば来た道を戻ろうと
身体が後ろを振り返ろうとするが、
消えてしまえばその動きを止めてまた足を進めていく。


「お嬢さん、どこかへお出かけかな?」
「・・・・・あおえ」
「此処は、君の来る場所じゃない」


そう、此処は時を渡る道。
本来人間が通ってはいけない道だ。
君は人の血も、神の血も持っている。


だから、今まで何事もなく刀剣男士と時空を行き来できた。


「どの本丸の審神者も、君のように時を渡らない。」


――――否、渡れやしない。


「それに気づいていない訳じゃあない筈なんだよねえ」


時の政府という機関は。


「君の背中にいる子、遡行軍の短刀なんだけど」
「・・・・・」
「・・・゛解放してくれないかな?″」


――――華のことをだよ?





――――――――――――・・・・


「華!!どこへいったんだ!!」
「しっかり抱いていたのに消えたんだ!」
「主様!!何処におられるのです!!」
「・・・ん?」


赤子の華が突然歌仙の腕から消えて本丸は騒然となっていた。
華の身体に戻さなければならない霊体なのだ。
何としてでも探し出さなければならない。
皆で本丸内を探していると、獅子王があるものに目を止めた。
色を失い枯れた庭、そこに道しるべのように緑が茂っている。
草花が生き新芽を出し、また花を咲かせている。


「なあ!これ華が通ったんじゃね?!」
「!・・・よし、これを辿っていこう!」


獅子王を先頭に後を続き、視線を足元から上にやる。
その先に見えるのは、這って進む赤子と、庭の池。


「華様ああああああああああ!!!!!!」
「長谷部ッ!?はっや!!」
「(あれ、この光景・・・前にも?)」


池を覗き込み落ちそうになる赤子を長谷部が何とか寸前で捕まえた。
赤子はとても嬉しそうにきゃっきゃとはしゃぎ笑っている。
その笑顔に長谷部は深く溜息を吐いたが、苦笑を漏らしていた。


「全く・・・華様・・池は気をつけるように申したでしょう」
「はしぇ!」
「・・・・え?」


喋れない筈の赤子が口にした言葉。
一同は固まり、しんと静まり返る。


「長谷部さん・・・華様、大きくなっていませんか?」
「そ、そういえば・・・少し重くなられたか?」
「はしぇ!ちゃぷちゃぷ!」
「・・・ちゃぷちゃぷ・・・・あ、ああ・・池ですか?」
「(笑ったら、大きくなられた?いや・・・何かあるはずです・・・)」


平野が長谷部の腕の中でほんの少し大きくなった華に
思うことがあり、うんうんと唸っていたときだ。


「平野、何か考えがあるのか?」
「鶯丸様!・・・いえ・・勘違いだと思うのですが・・」
「話してみろ、今は何でも試してみるべきだ」
「!・・は、はい・・・長谷部さん!少し考えがあるので協力して下さい!」


―――――・・・・。


「此処を歩くのか?しかし何故茶菓子を持って?」
「いいから、平野の言う通りに動いてみろ」


茶菓子を盆にのせて縁側を歩く長谷部の姿を
赤子の視線はしっかりと追っていた。
平野がこっそりとある場所に向けて手を振り合図を送る。
長谷部の服を隠れていた蛍丸が掴んで引っ張った。


「ッ!!!な、うお!?」
「ごめんねえ長谷部ー・・」
「ッあ、危ないだろう蛍丸!?」


見事に転んだ長谷部を心配そうに蛍丸は見下ろした。
その腕には猫のぬいぐるみが抱かれている。
長谷部はひっくりかえった衝撃で散らばった茶菓子の
ことよりも、今の状況を前にも見た気がして動けなくなった。


ひょっとして、平野の考えと言うのは?


「はせべ!いたいいたい?」
「・・・やっぱり、大きくなってます」
「どういうことなんだ、平野?」
「先程、池に落ちそうになったこと、長谷部さんが服を引っ張られて転ぶところ」


昔、審神者様が存命中に見た光景です。
僕はそれを覚えています。きっと、華様も。


「霊体の華様が成長なされているのは、僕の推察なのですが」


―――過去の思い出が影響しているのではないでしょうか?


「はせべ!おともして!」
「!?・・・・華様・・・それ、は・・・」
「おとも!・・・えへへー!」
「ッ・・・喜んで、おともします」


確信に変わり、平野と長谷部、そして皆は一つ頷いて
まだ探しているであろう者達の元へ華を連れて向かった。









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