審神者の土地に向かい走る馬が一頭。
風をきり駆けるその上には、
身の丈を上回る大太刀を背負った少年。
その後ろを三度笠を被った少年が乗っている。
見慣れた景色が近づいてきた。


「蛍丸、待って。先に様子を見てくる」
「わかった、気を付けて小夜」


馬を止めて、小夜が三度笠を外して偵察に向かう。
蛍丸は警戒を緩めず、馬を休ませ思考を巡らせていた。


そう、何故この二人が審神者の土地にいなかったのか。
それは、審神者が亡くなる前に練られていた作戦故だった。


「蛍丸や、すまないが小夜を連れてもう一度訪ねておくれ」
「はい、主様」


孫様の護衛任務を聞かされた後に、そっと告げられた言葉。
他の皆が部屋に戻っていくのを見送りながら、蛍丸は言われた通りに
小夜を呼びに向かい、小夜も不思議そうにはしていたが
兄弟刀の江雪と宗三に「いってきます」と伝えて部屋を出てきたのだ。
そして、主の待つ部屋に戻れば、待っていたのは主と、三日月だった。


「小夜、すまないね。眠くはないかい?」
「大丈夫です。」
「三日月や・・・」
「問題はない。すでに人は払っておる。周りに誰もいやせん」
「二人とも、今から話す任務は誰にも言わないように」
「わかりました」
「はい」
「・・・・もしも」


私が動けなくなる、或いは死に至った場合。
速やかにこの場を離れ身を隠してほしい。


審神者の言葉に、二人は驚愕を隠しきれない。
何故そのようなことを自分たちにしか言わないのか。
どうして死ぬなどと言うのか。


「私の身に何かしらあれば、政府の使者がすぐに来る筈」
「審神者が華の保護者となっている。つまり、審神者が動けないとなればだ」


必ず保護という名目で此処にやってくる。


「私の身が護られているのは、政府の力あっての事。それは理解しているし感謝もしている」
「詳しく話せぬこともあるが、簡潔に言うならばだ」


華を護る為に、この場を離れてほしい。


「蛍は錬度も十分にある。小夜は夜目が効くし蛍の目の代わりに偵察も出来る」


何より、力のある大太刀は目立つ。
この場を離れる際に目立たずに抜け出せるのは
体の小さな短刀、そして大太刀の中で唯一の体躯の蛍。


「小夜、蛍や・・・」


審神者の手が優しく蛍丸の顔を撫でる。
もう一方の手は小夜の頭を撫でていた。


「どうか、頼まれて欲しい」
「・・・わかりました」
「有難う」


願わくば、この任務が無くなることを祈る。
けれどもしも事が起こってしまったら。


「その時は、俺が蛍丸に審神者から預かっている神器を託す」


―――――・・・・。



そして、まさに事は起こってしまった。
審神者が床に伏し、小夜と蛍丸は
勿論その場に留まりたかった。
しかし、任務がある。審神者が頼んだこと。
失敗は許されないのだ。


審神者の土地は政府の結界の中にある。
その結界の外にいるように命じられていた。
隠れ潜み時がどのくらいたったのか。
結界を貼る石の色が変色した。
何かが中であったということだろう。


「見つけてきた。結界石の場所」
「わかった。行こう」



三日月との言葉を思い出しながら、
二人は審神者の土地へと再度駆けた。











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