広間の前に集められた華と短刀達。
一期はにこりと笑んで障子を開けた。

中は飾り付けが華やかに施され、
豪勢な料理がずらりと並んでいる。
中央には昼に厨で見たものが置かれ
きょとんと華は目を丸くしていた。


「なんていうんだっけ・・・」
「兄者、めりいくりすます、だったはずだ」
「めるくりうす」
「違う」
「まあまあ、めりいくりすます、華ちゃん」
「さあ、皆座った座った!」


鶴丸に背を押されて案内され
三日月の隣にちょこりと座らされた。
見たこともない料理が目の前に取り分けられて
固まっているようにも見える。


「華、祝いを皆で企画したのだ」
「左様です主様、本丸で初となる、我等のくりすまうすです」
「・・・・」
「(まさか、違ったか?何か間違ったか!?)」
「(いいえ鶴丸殿、たしかに確認しましたぞ!)」


小さな声で聞き逃しそうな程だったが
俯いて確かに華は呟いた。



――――すごく、うれしい。と


高揚し頬を赤くして華はにこりと満面の笑みを浮かべていた。
それに場の空気ががらりと安堵のものに変わり
誰を筆頭にしたかはわからないが、クリスマス会は開始された。


「かっこわるいよねえ・・・初めて使う調理器具だったからって・・焦がすなんて」
「鶏肉が炎に包まれていたよね・・・」
「貞宗がいれば派手だと騒ぎそうな程だったな・・・」
「そんなに!?」
「主様の手伝われた菓子、美味ですね」
「うむ、なかなか」
「賑やかだな、子らが嬉しい姿を見るのは、心が和む」
「親父殿、一杯」
「おお、気が利くな」
「あたしも飲んじゃうぞー!!たぬきもおいでよ!」
「いいねえ、俺も飲むか!」
「おてぎねがお星さまつけてくれたんだよね!」
「刺すことは得意だ!」
「華ー!!飾り可愛いでしょ!!俺がでざいんていうのしたんだよ!」
「本物のセンスが出ているだろう。俺もデザインしたんだ」
「わあ!桜のおかざりもある!」
「冬だけど、華の本丸っていえばこれだよね。僕の案だよ」
「白い綿を桃色で染めたんだ」
「それは切国の案だよ、布少し染まってるでしょ」
「きりくにかわいいね!」
「か・・・かわいいとかいうな!!!?」
「あー!そのお肉ぼくのだよ!」
「早いもんがちー!」
「こらこら行儀悪いで二人・・・」
「歌仙さん、このお料理はなんですか?」
「秋田、これはぽてとふらいというんだよ」
「燭台切さん、と、虎くんのためにお肉、わけてくれて有難う御座います!」
「どういたしまして」
「長谷部―!!その鶏肉くれんね!」
「自分のを食え自分のを!?」
「すげえ・・早すぎて箸が見えねえ・・・」
「ひっく・・・酒だあ!酒もってこいよお!!」
「皆楽しそうだねえ」
「兄者も楽しそうだな」
「うん、華が一番楽しそうで、嬉しいよ」
「そうだな・・・」


皆の笑顔が溢れる空間で、一番小さな主が最も嬉しそうに見えた。



――――――・・・・。

風呂から上がり、髪を乾かして布団に入り込む。
傍で座り、小狐丸は微笑み行灯を消した。


「楽しかったですか、主様」
「うん・・・皆が楽しそうで、華も嬉しかったよ」
「左様ですか・・・この狐も楽しませて頂きました」
「よかった・・・」
「・・・主様、良い夢を」
「うん・・おやすみなさい」
「・・・・・」
「こまる?」
「・・・・・・主様」
「なあに?」
「・・・・・いいえ。おやすみなさいませ」
「・・うん」



――――・・・・。


「寝たか?」
「粟田口も就寝致しました」
「来派も問題なしですわ」
「左文字、就寝です」
「良く似合っておるぞ、鶴よ」
「・・・・髭生えた白い男なら、髭切じゃないのか?」
「僕は名前は髭だけど生えてないからねえ」
「・・・わかった・・・腹括る」
「なあに、任せよ。この父も奮おうぞ」





















おーーーーっほっほっほっほっほおー!!!!!!!




「!?な、何か声がしませんでしたか?」
「んあ・・・?なんかある」
「見てみて!枕元に箱があるよ!」
「待て、奇声を上げた奴の罠かもしれねえ」
「兄さん!違いますよ!華様の言っていた赤い服の!」




「一期が落ち着かせにいったが・・・」


さんたってのはああ言うんじゃなかったか?
そう聞いていたが?まあ初めてのことだから動揺しただけだろう。

ほれ子よ、次に行くぞ・・・。


「父上の機動力で枕元に正確に箱を置いて行く作戦だけど・・・」
「本丸からおほほほと聞こえるな」
「あれって、ほーっほっほーうじゃないの?」
「誰だ鶴に吹き込んだのは?」
「ぼくだよ?違ったんだねえ・・・」
「髭切・・・・」
「そろそろ僕らも寝ないとね、怪しまれるよ」
「だな」



――――――・・・・。


「良い子はいねえがー」
「鶴丸・・・」
「・・・・はは、寝たか?」
「ええ、ぐっすりお休みになられています」
「邪魔するぜ」


静かに障子を開けて中に入る。
完全に夢の中に旅立っている華に
一同は安堵の笑みを漏らす。


「良く、眠れ。我が愛し子よ」
「お嬢、何が欲しかったんだ?」
「芍薬殿と蓮華殿、空木殿に協力頂きました際」


主様の紙だけ確認する前に三方の元へいきました故。
誰も中身は知らぬものかと。


「大きいものではないな」
「軽いぞ」
「ま、明日を楽しみにしようじゃないか」



めりーくりすます、華。



本丸初めての、クリスマス――――。









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