――――三日月宗近、前へ



時の政府、刀剣男士を拘束する空間。
青白い電子球体の中へ、刀を奪われ後ろ手に両手を縛られた
三日月宗近が背を押されて押し込まれた。


ふわりと浮く球体、現世の技術だろう。
どういった原理か等興味はないが
これから行われようとしていることは想像がついた。

球体の周りに見られるものは、誰の物ともしらない


―――折れた刀の破片だ。


「三日月宗近、前審神者長を掟に背き穢した刀剣男士」
「・・・・ふっ」


何も知らずに、ただ情報だけで解釈をしている人間共め。
前審神者と俺の間に産れし娘。

その事実が明るみになった途端に、俺は本丸から連行された。
空木が必死に止めようとしてくれていたが
彼も政府の人間によって拘束されて連れられていた。
今頃どうなっているのかは、わからない。


何が掟なのか、何故人と神の交わりが禁忌なのか。
それは理解することは出来ない、が、この目の前で
審神者の長という存在を心酔する人間らにとって

俺は目障りな存在なのだろう。


「協議の結果、三日月宗近」


――――刀解処分が確定した。


「ふふ・・・はっはっは」
「何がおかしい!?」
「協議?そんなものはしておらんのだろう?」
「な、何を言うか!」
「何を恐れ、何を理由にしているのかはしらん」


だが、俺を消せば華が手に入ると思っているのではあるまいな。
否、貴様ら人間は過去に華を拉致し意のままにしようとした
前科があるからなあ、いやあ恐ろしいことよ。


「遡行軍よりも、そなたらの方が俺にとっては敵のようだ」
「貴様!!」
「華は、俺と審神者の娘だ。その事実は改変できぬ」


俺を刀解しようとも、いかなることをしようとも。
その事実は、消えることはないのだから。


「俺を消したとて、本丸にはまだ男士はおる」


彼ら全てを刀解してでも、華を手に入れようと?


「そなたらが恐れるのは、果たして遡行軍か?」


それとも、俺達付喪神という妖怪か?


「ええい!何をしている!!三日月宗近を刀解せよ!!」


政府の人間の一人が端末を触る。
本霊の俺よ、どうか以降顕現してくれるな。


目を閉じて、脳裏に華の笑顔を浮かべて
三日月宗近は微笑んだ。



暫くたっても、刀解される気配はなかった。



「とと様を出して」


この場で聞く事等ありえないと思っていた声が聞こえる。
目を開けて見やれば、視界に入るのは愛しい娘の姿。

何故此処に?芍薬の屋敷で療養している筈では?


「お、長様・・・何故此処に・・・!?どこからお入りになられた?」
「・・・とと様・・出してあげるね」


電子球体に華が両手で触れると、小さく音が鳴り
容易く拘束が解かれた。そのことに政府の人間は
驚き、恐怖の表情を浮かべる者もいた。


「皆に酷いことをする人のいるところのお手伝い、したくないよ」
「お、・・長・・さ、ま?」


三日月の前で守るように両手を広げて睨む華。
その前にふわりと浮かんで現れた存在に
政府の重役らは息を飲み後ずさった。


「我は小烏丸。過去、時の政府と盟約を交わした」


刀剣の父のような存在よ―――。


「華はこれからも、あの本丸で暮らすよ」
「・・・華?何を―――」


ずっと皆とこれからも一緒にいるの。
あそこにいる限り、ずっと体は小さいままで
大人になることはないだろうけども


それでもいい。もう決めたことだから。


「我も力を貸す。ただし、分霊はどこへもこれ以上はいかせん」
「なん・・・と・・・」
「我からの言葉はこれよ」


この幼子を、神として崇め奉れ。
子はそなたら、人と我等、神との調停者となる。

盟約通りに、これからも刀剣男士への資材を本丸に送る事。
そちらからの要求は本日より飲まず、此方が判断し動く。


口出しをするな――――。


「・・・・我が子と共に、失礼させてもらうぞ」


華と三日月に触れて、小烏丸はにたりと笑んで
時の政府の空間から三人の姿を本丸へと移したのであった。



―――――――
審神者の長は

以降から「人と付喪神の調停者」と相成りました。
人と神の血をひいている華はこれからも
本丸で小さいまま、永久に生きることになります。
でも、華はそのことに後悔なんて欠片もありません。








×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -