静かに障子を開けて部屋の中を覗き見る。
布団が三組敷かれていて、清光、華、乱と並んで眠る。
清光と乱の手は華としっかりと繋がれていて
二振りの頬には涙の後がくっきりと残っていた。


「安定」
「蓮華さん・・・」
「貴方も、おやすみなさいな」
「うん・・・」
「・・・すぐに、治るものではありませんから」
「・・・わかってる・・」


清光、乱、華を保護し、心身の療養をさせるため
芍薬の屋敷に連れた後、安定は本丸へ帰還しようとはしなかった。
当然、一期一振、小狐丸、三日月らも残ると言ったのだが

それを良しと、蓮華と芍薬は言わなかった。
今回の件を受けて、燻っていた派閥も動き出し、
華を政府が保護しようと押しかけてきたのだが
それさえも二人は拒否したのだ。


「我々は政府で勤めていますが、それ以前に医師です」


患者を最優先に考えます。なので権力争いや
しょうもないことに巻き込まないで下さい。


「第一、長を一番に考えるのであれば、まず休ませてあげなさい」


政府の人間を追い返す、その為に本丸の男士も
この空間に残らない、この条件を付きだされた故に
小狐丸らは渋々一度本丸へと帰還することになったのだが

安定のみ、頑なに拒否したのだ。


「清光から離れるなら、折れる」


意志は固く、安定も怪我は負っていた。
故に、特別に許可が出た。
しかし、治ればすぐに本丸に帰るように。


そうして、幾日か過ぎていた。


清光の両手には、包帯が巻かれている。
本来、刀剣男士は傷を負えば手入れ部屋に入り
その身に受けた傷を癒し消すことが出来る。

だが、心の傷は手入れ部屋では治らない。
爪も心の影響からか、治りが悪く時間がかかっている。
乱の傷も同様だった。蓮華が政府や男士さえも
本丸に待機させて、治療に専念させたかったのは

―――これである。


「そういえば、あの三振はどうなったの?」
「亀甲、大典太、物吉貞宗ですね」


華を誘拐した男ら三人が隠していた刀剣。
亀甲、大典太、物吉の三振。

物吉貞宗を折られまいと脅迫され使役されていた二振は
芍薬と共に政府へと出向いている。
物吉貞宗は本体の損傷があった為、政府の厳重な手入れ部屋で看病をしているようだ。
御咎めはなく、解放されるだろうと蓮華は告げた。


「・・・・華は・・・」
「・・・・・優しすぎる子だから」


起きている間は笑顔で清光と乱に接していた。
だが、安定にも蓮華にも見てわかる。
無理をして笑顔を浮かべていることが。

時々錯乱する清光を落ち着かせて抱きしめて
よしよしと頭を撫でる小さな主。


―――華のせいで、みんなが痛い思いをしちゃった。


そう、保護され屋敷にきた華は一度だけ蓮華に呟いた。
華のせいではないと告げても、首を振るだけ。
自身も怖い目に合ったというのに、自分を放棄して刀剣らの心配をしていた。


このままでは、華が壊れてしまうかもしれない。

もう一度だけ隙間から中を覗き見て
安定は溜息をはいて、静かに障子をしめた。









×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -