審神者の葬儀が粛々と執り行われる中で、
政府の黒い衣服を纏った者が華の部屋へと出入りしていた。


審神者の屋敷は、荒れていた。


「孫様に触るなッ!!」
「孫様は未だにお目覚めになっておりませぬ。どうか――ッ」
「・・・・・」


答えは返らず、黙々とそして強引に事を進めていく。
何かがおかしい。違和感を覚える。本当にこの者らは


政府の者なのか?


以前の孫様の護衛の半数が化けた敵であった件もあり
不安と疑いの目でどうしても見てしまうのだ。
そして、取り乱す清光の気持ちも理解できる。
今は亡き審神者は、あの大倶利伽羅や山姥切、同田貫でさえ
表には出さないが信頼し慕っていた。


くたりと力なくされるがままの華に、
様子を窺っていた安定も我慢が出来なくなったようだ。
清光に加勢して抗議し始めてしまう。
屋敷の修繕を行っていた者達、騒ぎを聞きつけて何事かとやってくる者。


嗚呼、どうか審神者を今だけでも静かに眠らせてやってほしい。


「孫様に何するんだよ!!」
「ちょっと、どこ連れてく気!?」
「・・・・・ッ―――」


何等かの結界的なものなのだろうか。
完全なる拒絶、清光と安定の体は庭に弾き飛ばされていた。
口を開かなかった政府の役人が、感情も出さずに口を開いた。


「此処では危険と判断したため」


審神者の血を絶つ訳にはいかない。
故にこの場を一時封印し、【安全な場所】に移す。


「安全な場所ってどこだよ」


獅子王が噛みつく。
だが役人は答えない。


「お前達を審神者が審神者になられるまで、元の姿に戻す」
「な・・・っ」
「拒否権はない」
「強引ですね」
「本当に政府の者なのかよ」
「時間の無駄だ。審神者を――」


皆が抗議の声を上げて何とか連れて行かせまいとする中。
静かに、その前に立つ者がいた。


――――三日月だ。


誰が見ても一目瞭然。


彼は、怒りを身に纏っている。


「政府とやらは、静かに審神者を見送ることも出来んのか。葬儀の最中だ」
「もう審神者はこの方だ」


まだ幼すぎる。故に審神者として生きれる歳になるまで
此方の【安全な場所】で保護をする。


「・・・それで煩わしく邪魔な我々を刀に戻すと。ほほう。それではまるで――」


我々がいては不都合があるようだ。


「知られたくないことでもあるのか?・・・ん?」
「・・・・・・・」
「近侍も付けさせない。明らかに疑われる行動だろう」


軟禁でもするつもりか?


この言葉に皆の目の色が変わった。
政府の者の空気も僅かに変わったように思える。


三日月に神器らしきものを向けて、役人は睨んでいた。
動じることもなく、まるでわかっていたように三日月は立っている。


「人の言葉では、こういうのであろう?」


覚えておれよ・・・と。


そこに、三日月の姿はなく。
残ったのは、刀だけ。


長谷部、愛染、他の者らも次々と変わっていく。


「・・・っ孫様」
「・・・・・」


清光が無駄だとわかっているが、手を伸ばす。



その手は空しく、消えた―――。



そして、審神者の屋敷は暫くの間、
政府という機関により封印されることになる。


審神者が審神者になられる日まで・・・・。











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