「小狐丸・・・何をしておる」
「・・・見てわかりませぬか三日月」


武装し、身支度を整えた小狐丸を三日月が遮る。
小狐丸は小さく溜息をつき、手に握りしめていたあるものを差し出した。


「!・・・それは・・まさか、華のか?」
「ええ・・・先日、内密に頂戴致しました」


手のひらを転がる小さな鈴。
転がっているが、音は鳴らない。
三日月にはその鈴が何なのか理解していた。
自身もその鈴を持っているからだ。
だが、華のものではない。

以前、歌仙から譲り受けたのだ。
それは小狐丸を捜しに華が転送門を使う前日。


「これは、君が持っている方がいい」
「これは?」
「『鳴らずの鈴』という。初期刀である僕に渡すと言って貰ったものだ」
「それを、何故俺に・・?」


鳴らずの鈴は、たとえば審神者の身に何かあれば鳴る不思議な鈴だ。
普段は揺らしても音は鳴らない。音が鳴れば、審神者がどこにいるのかわかる。
そういって渡してきたものなんだけれども、空木から聞いたんだ。

この鈴は、本来は夫となる者、一生隣に立つ者に渡すものだそうだ。
僕の場合は、後者の意味で渡してくれたんだろうけれども。


「だからこそ、この鈴は三日月、君に相応しい」
「・・・歌仙」
「大事にしてくれたまえよ・・・」


三日月も懐から鈴を取り出して小狐丸に見せる。
この鈴が、華がいなくなった際に鳴り響いたことで、
小狐丸に貸したことで、山の中から自害寸前の華を見つけることが出来た。
審神者の鈴ではあったが、審神者の加護があったのだろうと思っている。
そして小狐丸がその鈴を貰い、今まさに出陣しようとしているということは


「居場所が、わかったのだな」
「ええ・・・一刻も無駄にしたくはありませぬ」
「一振りで行くつもりか」
「・・・・主様が待っておられる」
「落ち着け、今のお主では冷静な判断が出来まい」


俺も行く、暫し待て。

真剣な眼差しで告げる三日月に、
ぐるると威嚇をしていた小狐丸が尾を下げた。


「・・・あまり時間をかけないで下さい」
「うむ。すまんな・・・」


チリン・・・


小さな鈴の音が鳴り響く。
何もされていなければいいが


誘拐したという事自体許しがたき行為。



主様・・・今暫く辛抱下され。









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