パキリッ!!


「ッ・・・!?」
「う、鶯丸様!火傷は!?」
「問題ないさ。心配するな平野」
「拭くものを持ってきます!!!」
「不吉だな、湯飲みが割れるとは・・・なあ、三日月」
「・・・・・俺のもだ」
「何?・・・」


縁側で茶を飲んでいた三日月と鶯丸。
彼らの湯飲みが何の前触れもなく割れた。

三日月の言葉に視線を向けて、鶯丸は目を見開く。

割れたというには、酷過ぎる。
どうしたらこんな割れ方をするのか。

割れたと言うよりも、砕けたといっていいかもしれない。


「遅いな・・・」
「ああ、今日は演練だったか」
「・・・・・・・・」
「騒がしいな、言っているそばから帰還したようだ」


転送門の辺りから声が複数聞こえてくる。
しかし、どこか様子がおかしい。
三日月は立ち上がりその場へ向かった。


―――――――・・・・。


「大和守!!!しっかりしろっ!!!」
「誰か!!手を貸せ!!和泉守!!堀川はいるか!!」
「僕・・・は・・・いい・・・さだ・・む・・ねを・・・ッ!」
「馬鹿!!国広!!運ぶぞ!ついてこい!!」
「う、うん!・・・重傷なんだから・・抵抗しないで!」


転送門を通った瞬間に崩れるように倒れた安定は折れるまではいかないが
かなり損傷が酷かった。その背には足を深く斬り所々傷を負った貞宗が
おぶられていて、一緒に地面に倒れ込む。
無理矢理に安定は手入れ部屋へ運ばれていく中、
騒ぎを聞きつけた大倶利伽羅が動揺した様子を見せて駆け寄ってくる。


「ッ・・・貞宗!!・・何があった!誰にやられた!!」
「・・ッめ・・・・・・」
「・・何?」
「貞ちゃん!!!!」
「光忠!」
「・・・ご・・・め・・・ッ・・・おれ・・・ッ!!」


何も、出来なかった・・・!

青江と、髭切が・・・俺も・・・華たちと
遊んで来いって、いってくれて・・・


それで・・・向かってたら・・・大和守が・・・
変な結界に、捕まってて・・・


「おれも・・・へんな・・・やつに・・いれられて!」
「・・・それで」
「三日月さんッ・・・!」


傷だらけの貞宗を労わるように撫でて、先を促す。
大倶利伽羅が腰布をとり肩にかけてやれば
嗚咽は酷くなるが、言葉が溢れてきた。


「おれじゃ・・・ッ・・・結界の中に出てきた・・・やつに・・・勝てなくて!!」


俺・・・おられそうに・・・なって・・・!!


大和守が・・・庇って・・くれて・・・っ!!



「貞宗を折るなら・・・僕を先に折れよ・・・ッ!!!」
「・・ぅ・・・ッ・・や・・・ま・・・」
「清光をかえせ!!!!!」


大和守も、かなり・・・深手を負ってたのに・・・・ッ


おれが、もっと・・・強かったら・・・!!


お・・・れ・・が・・・ッ!!!!


「・・・・泣き声は向こうできいてやらぁ・・・ひっく・・・」
「・・・ッ・・・ふ・・ど・・・ぉ!!!」
「うるせえよ・・・手入れ部屋・・・俺が預かるっ!」


貞宗を背負い、不動は有無を言わせる間もなくその場を離れた。
後に大倶利伽羅と光忠も続き消えた。


転送門が再び灯り、二振りの姿が確認された。
遅れて駆けつけた一期が不安な表情で見つめる。


「青江殿!!」
「・・・誰か、にっかり君を・・・運んでくれないかな?」
「青江!!私が引き受けよう・・」
「同行致します。治療の手助けは出来る筈です」
「石切丸、数珠丸、頼んだぞ」
「任せてくれ、三日月」


意識のない青江もまた、大和守同様に深手を負い
血に塗れていた。運ばれていくのを見送り
すれ違うように膝丸が駆けてきた。


「兄者!!!怪我はないのか!!」
「・・・・一期君・・・すまない・・・」
「何を・・・謝られるのです・・・?」


負傷者が運ばれるのをすれ違いながら横目で見届け
門の前に小狐丸がつくと同時に、髭切は告げた。


加州清光、乱藤四郎


――――華が、何者かに誘拐された。


「兄者・・?・・・っ兄者!!!!?」



言葉を言い終えて倒れ込んできた髭切を支える為
背に手を回した膝丸は、ぬるりとした感触に嫌な汗が浮かぶ。
表向きは怪我の様子は見られなかったが
背には太刀筋が一つ、綺麗に入っていて。

目を閉じて言葉を発しない髭切を必死に呼ぶ膝丸の様子を


ぎりりと唇を噛みしめ、左手のあるものを壊さんばかりに

小狐丸は怒りに体を震わせて握りしめた。









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