「主様、おはようございます。」
「ふぁ・・おはよう。こま―――」


かたり・・・・


障子を開けて、小狐丸は主である華の姿を見るや
静かにまたそっと閉じてしまった。

嗚呼、いつものように可愛らしい欠伸を・・

いや、落ち着けそうじゃない。


きっと見間違えだ。そうだそうに決まっている。

もう一度障子を静かに開ければ、不思議そうに此方を見つめている華。


「主様・・・・」
「おはようこまる!」
「・・・・・・・・・・・・」
「こまる??」


見間違えではない、なればこれは・・・


認めたくない、認められない。



がしりと華の両手を包むようにし、
視線を外さないようにし、不安げに小狐丸は思いを吐きだした。


「一体・・・どこぞの狐に襲われたのですか!!!!」
「ふぇ?」
「御労しい・・・この狐の主様の清き体を穢し眷属にしようとは」
「こまる?どうしたの?」
「どこの狐じゃ・・・縊り殺して・・・」
「・・・こまる・・おはなし、聞いて??」
「ッはい!主様!!」
「きつねのけんぞくって、なあに??」
「?・・・主様はこの狐以外に襲われ身を穢されたのでは?」
「???どういう意味??華難しいおはなしわからないよぅ・・」


困った素振りの華の本来あるはずの場所に耳はなく
頭の上に大きな黒い耳が二つ、ぴこぴこと動いている。
小狐丸は華の言葉と様子から、自分が想像した最悪なことで
この状況になっていないことに気づき、安堵の息を吐いて床にずりりと倒れ込んだ。


「鏡を・・御覧に」
「・・・!ふわふわぁ!!」
「!?・・なんと・・・尻尾まで・・・」
「おしりむずむずするとおもった」
「何と立派な尻尾なのでしょう・・・毛艶も良く」
「ふふー!こまるといっしょ!」
「(はぐー!!!!)」


――――――・・・・。


「管狐の式神を出す練習に失敗したんだよ」
「華もこんこんちゃんの式神さんが出したかったの」


どうしてこうなったのかを聞けば、答えは何とも可愛らしいことだった。
さらに練習相手は石切丸と青江だったらしく、そういえばその時は自分は
遠征に出ていたんだなと思い出す。

練習中には生えていなかったのだろう。そうならば石切丸が教えない筈がない。
眠っている間に失敗の結果が出てきてしまったのではないかと。
石切丸は出陣している故に青江のみ呼び出し今に至る。


「その尻尾の付け根はどうなっているのかな・・・気になるね・・」
「ん?どうなのかな??」
「見せてもらうよ・・・ふふふ・・・」
「青江・・・貴様主様に触れようとするな」
「どうしてだい?気になるのだからいいじゃないか」
「だめじゃ」
「そのまま尻尾を斬りおとして血を・・・」
「青江・・・」
「冗談だよ」


もっふもっふと揺れる尻尾に華自身が嬉しそうに
さわさわしている様に、小狐丸は悶絶しそうになるが
青江の手前平静を装っていた。


のだが・・・・


「君の子を孕んだら、こんな子供が産れるのかな」
「ぶふぉッ・・・ごほっ!!」
「汚いよ君」
「・・・ッッな・・・ななッ・・・!!!」



「ぬぬぬぬぬぬ主様と狐の子だと・・!!?この戯けめが!!!気は確かか!!!」
「嫌なのかい?彼女とは不満かな?」
「不満などあるはずがない!!!主様は狐にとって世一番の女子じゃ!!!」
「ならいいじゃないか」
「主様はまだ齢十三じゃ!!清くあって―――」
「でも君の時代だと」
「その口を閉じぬか!!!」
「赤くなって面白いね」
「貴様ぁあああ!!」
「でも想像してごらん?君と彼女の子供だったら」



想像中・・・・

『ととしゃま!だっこしてくだしゃいましぇ!』


『このお耳はととしゃまとお揃いじゃぞ!』


『尻尾もじゃ!かかしゃまの髪と同じくちゅやちゅやじゃ!』


「・・・・・・・」
「君の心、穢れてるね」
「どの口が言うかどの口が!!!!!誤解するな!!!」


主様と狐は主従!!斯様に邪なことは考えもせぬわ!!


「こまる!今日はこまるといっしょだからこまるごっこするのじゃ!」
「(はぐー!!!!!死ぬ!!!)」



誰ぞ、今この幸せの時に、殺してくれ・・・






・・・否、死ぬわけにはいかぬ故、やはり止めてくれ。



そして、耳と尻尾は無事に一日でもとに戻ったのでありました。


――――
あとがき

ギャグ?らしいものは書いた記憶がないな。
たまには小狐丸を壊してみると面白いですな







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