本丸から華がいなくなったことは、
それほど時間はかからずに皆に知られることになった。
慌てる者も当然いる中、その一人だと思っていた男士、


小狐丸は落ち着いた様子で転送門の前で立っていた。


「取り乱しているのかと思っていたが」
「まさか、主様の近侍で初期刀の狐が、醜態は晒しませんよ」
「で、どこだ」
「京都、と・・・」
「ふむ・・」


扇をぱちりと閉じて、三日月は思案する。
二振に近づく幾つかの気配。それに小狐丸は振り返った。


「京都といったら、僕たちに任せて下さい」
「無事に連れて帰ってやるさ!」


戦仕度をした堀川と和泉守、その後ろには


「隊長の心得はわかっている」
「向こうは夜戦。俺達の方が有利だからね」
「小狐丸さん、三日月さんも、本丸をお願いします」
「・・・そうだな、太刀は足手まといになる。任せたぞ」
「ちっくと待ってくれ!!」


転送門に移動する皆の足を止めた声の主に、皆の視線が集まる。
小さな影と共に息を切らして駆けてくるのは


「陸奥守・・・?」
「んだよ、お前は此処で待ってろっつったろ」
「用があるんはわしやないぜよ」
「・・・蛍丸?」


陸奥守に追いついた蛍丸に、皆は何故彼が此処にいるのかと不思議そうに見つめていた。


「わしの代わりじゃ」
「お願い、俺もつれてって」
「蛍丸、京都は大太刀の長所を活かせないんだよ?」
「足手まといにはならない。お願い・・・」
「わりことしの愛染がおらん。華とおる筈ちや」
「!・・・愛染が、勝手なことするとは思えないんだけど」
「長曽祢、自分の身は自分で守るから」
「・・・・・」


腕を組んで目を閉じ思案する長曽祢。
蛍丸の錬度は本丸の誰もが認めるものだ。
しかし場所が悪い。怪我を少なからず負うだろう。
それは蛍丸でなくてもだ。それをわかっていて志願してきている。

愛染のことが何よりも彼を動かしているのだろう。
勿論、華のことも心配しているはずだ。


「此処に置いてっても、蛍はづつのうて、づつのうて、しょうがないやか」
「・・・・陸奥守の言う事も、一理ある」
「国俊の勝手したことは、同じ派の俺の責任でもあるから」



「・・・わかった。ただし、俺達は仲間だ。一つの隊を組み進む」


故に、皆で助け合い進む。お前さんが責任を感じて
一人で無理をして戦うということは許さん。それでいいな


「ありがとう!陸奥守も」
「おっこうなこといよらぁ。皆、気をつけ」














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