幼審神者の本丸内は静かに時を進めている。
いつも賑やかで穏やかな風が吹いてるというのに。


それは審神者である華が床に伏しているからであった。

どこから入り込んだのか、政府の何やら小難しい装置の故障の隙をついて
本丸内に敵が潜入し負傷したばかりだというのに。
傷は迅速な応急処置と、後に政府の医者による治療の末
それほど時間はかからずに綺麗に塞がって治ったのだが

突然意識を失い、暫く華は昏睡状態に陥ってしまったのだ。
高熱と共に一時目を覚ましたのだが、また眠りにつく。
意識は戻ってきているが、熱が下がる気配がみえない。


そんな日々が続いていた、ある日のことだった。


実は、本丸が襲われた日から、一振の男士もまた
手入れ部屋から出ることが出来ない状態でいたのだ。


彼の名は・・・・


「・・・・・あい、ちゃん?」


ふ、と目を覚ましたのは深夜。恐らく皆眠りについている。
華が弱っていることから、政府の空木による強力な結界を貼っているので
今は男士の護衛の任務は解かれているのに、気配を感じて目を覚ましたのだ。


「ごめんな・・・華・・・俺、・・・俺がいかねぇと」


そう、声がしたのだ。とても悲しそうな、けれども力強い声。
まだ熱のある体は言う事を中々聞いてくれないが
何とか起こして上着を羽織り外へでた。


気配を辿って追いかけると、ついた場所は転送門だ。
その前に、目的の人物は立っている。


「くそ・・・皆いつもどうやってんだ・・・」
「どこ、行くの?」
「!?・・・華、寝てろよ。ふらふらじゃねえかっ」
「あいちゃん・・・手入れ部屋から出れたの・・?」
「お、おう・・・心配かけたな」
「槍から、助けてくれてありがとう」
「いいってことよ!」


敵の中にいた、一体だけ物凄い速さを持った槍。
その槍の攻撃を軽傷で済ませられたのは、
このあいちゃん、「愛染国俊」のおかげである。
華を庇う為突き飛ばし、自身がその槍を受けてしまったのだ。
手入れ時間が終わったのを見ても、愛染は目を覚ますことはなく
華と同じく暫く眠った状態が続いていたのだ。

それが今、目の前で立っている。


「・・・悪いな、華」
「何しに、行くの?」
「!・・・」
「あいちゃん、どこへ何をしにいきたいの?」


わからないと、この門を開けてあげられないよ。
そういえば、愛染は目を見開いて、握り拳を震わせた。

「夢を、見たんだ・・・けど、あれは絶対夢じゃない」
「うん・・・」
「・・・・止めてぇ奴がいるんだ・・・止めないと・・・」


歴史が変わっちまう!!


「・・・わかった。華も行く」
「は?・・・だ、駄目だ!!熱あるし危ねぇし!!」
「あいちゃん、門を動かせるのは華だけだよ」
「ぐ・・ぅ・・・・ッ・・・ぜってぇ・・・無茶しねえ?」
「それは、あいちゃんでしょ??」
「はは・・・っ、そうだよな」


皆、すまねぇ・・・ぜってぇ華を護るから。


歴史を護って、見せるから!!



手を繋いで、光りが淡く放たれた門を潜る。



愛染明王・・・俺に力を貸してくれ!!!




門が示す場所は・・・



     京都―――――・・・




――――――
愛染が眠りにつき、華が槍に刺された話は
短編→冥冥之志にて。此処から話は続いています。







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