「・・・・ん・・・?」


部屋の灯りがついて何やら物音がする。
今日は大倶利伽羅は遠征から帰還してすぐに
華の寝所の護衛につく筈。
まあ、部屋に何か用があって戻ってきているんだなと
微睡の中光忠は目を開けずに寝返りをうつ。


「おい」
「・・・・・」
「光忠」
「・・・・ん・・・・ぅ・・・何・・・伽羅ちゃん・・・?」


薄目を開けて何とか意識を浮上させる。
気を抜くとすぐにまた眠りの世界へ行けそうだ。
しかし、自分をこんな時間に起こすなんて珍しい。


「・・・布団を敷く間、任せる」
「え・・・何・・・伽羅ちゃん今日は・・・あれ?」


何とか体を起こして目の前に下された影に
光忠の意識がだんだん覚醒してくる。


「華ちゃん?どうしたの・・・何で泣いてるの!」
「・・・ひっく・・・っ・・・み・・つぅ・・・!」


ぎゅうと抱きついてきた華の頭を撫でて
困惑しつつ大倶利伽羅を見るが、
頼んだ、そう言われて彼は布団を敷き始めた。

冷えるといけない、自分ので申し訳ないが、
華を布団に入れてやった。
しがみ付いて離れる気配はない。
何かを怖がっているようにも見えるが、まさか敵襲か?


「またせたな!光坊!伽羅坊!!」
「あ、おかえりなさい鶴さん。」
「遠征から帰って伽羅坊に話を聞いてな、今晩は俺も厄介になるぜ」


狭くして悪いな!といいつつ笑っている鶴丸。
状況の呑み込めていない光忠は事情の説明を頼んだ。


「・・・お、お楽しみ・・お話会って・・・あおえが言ったの・・・」
「うん、それで?」
「・・・おばけの・・・おはなし・・で・・っ」
「あー・・・わかったよ華ちゃん。怖かったね」
「青江のやつ・・・(華の怖がる顔見たさで呼びやがったな・・・)」
「護衛につきにいったら霊力の乱を感じてな・・・」
「それで伽羅坊が部屋に入ったら、こんもり埋まってたんだと」


「そら、こっちこい」そういって鶴丸が華を抱いて布団を移動する。

「鶴さん、僕は構わないのに」
「いいや、光坊。お前だと眠っている間に潰すかもしれないだろう」
「・・・僕寝相悪くないと思うけど?」
「いや・・・抱いたまま寝たらだ」
「ああ・・・うん・・・心配になってきた・・・」
「伽羅坊は心配しすぎて力が入らないだろう」
「・・・・・」
「まあ、俺に任せておけ」


これでも昔はお嬢と一緒に寝る日がそこそこあったんだ。
やあ懐かしいな!最近じゃあ滅多に一緒に寝なくなったしな。


慣れた様子で華を慰め睡魔を誘っている鶴丸に
こればかりは自分たちよりも適任だろうと任せることにした。
大倶利伽羅、鶴丸、華、光忠の順に並んで布団に入る。


「おつる・・・」
「・・・・何だ?」
「天井・・・大丈夫?」
「あ?何を言われたかしらんが、俺達がいるんだ。大丈夫さ」
「そうだよ華ちゃん。安心しておやすみ」
「・・・寝ろ」
「うん・・・・わかった・・・」







―――ごとっ!



「!!・・・おつる・・・っ押し入れ・・・」
「すまん・・・枕だろう・・」
「だ、そうだ。中で枕が転がったんだろ」







ずるずる・・・・



「・・・・ぅ・・・」
「・・・・ほれ、お嬢。ここに耳当ててな」
「!・・・」


抱き寄せられて、耳が白い胸板に当たる。

トクトクとどこか安心するような音がする。
鶴丸の生きている証の音。


「・・・・いい夢、見れるといいな。華」
「・・・うん・・・おやすみ・・・おつる・・・みつ・・・からちゃん」



暫くして漸く、小さな寝息が一つ。


「寝たか?」
「貞ちゃん、寝てたはずなのにいないと思ったら・・押し入れにいたの」
「みっちゃんが寝てる間に事情聞いてさ、部屋狭くなるだろ」


俺は夜戦出てるから夜強いし、ぱっと目覚めちまった。
それに、会に出てた時から様子が気になってたんだ。


「俺なら体小さいし押し入れ余裕だぜ!」
「有難う・・・明日、ちゃんと言いに行くから」
「説教なら、俺もいこう」
「・・・俺も同行する」
「俺も行くぜ!」



こうして、夜は静かに更けて行った。



―――――・・・・・。



「ふふふ・・・大きいモノをもっているんだねぇ」


声のことだよ?


「黙れ・・・」
「お嬢を怖がらせて遊ぶんじゃない・・・」
「あの顔から血の気が引いて青ざめていくのが・・・たまらないよねぇ」
「君の性癖は聞いてないよ」
「勿体ないね。恐怖して震える唇・・・可愛いだろう?」
「反省する気がないな」
「なあみっちゃん、いっちょヤっとく?」
「そうだね、お仕置きが必要だね」
「心配性だねえ」


この後、事情を全て聞いた三日月、小狐丸、一期も加わり、
怖い話会禁止令が暫く布かれることとなりました。










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