「俺が・・・もっと早くにこの本丸にきてりゃ・・・」


伽羅坊が折れなくて済んだ・・・
苦笑しながらも、嬉しそうに涙しながら


「よか・・・った・・・僕が・・消える前に・・・」


鶴さんに・・・あえ・・た・・・あえた・・・よ・・・か・・ら・・・ちゃ・・・ん


「光坊?・・・光坊!!!?」


顕現して、外に出た瞬間に倒れ込んできた光坊を
腕の中で失ったんだ。その光坊の手にあったのは、伽羅坊の・・・・。


まるで地獄に来ちまったのかと思った。
一期が問い詰めてるのを、隠れて聞いていた。


あの女、言ってやがったさ。


あんた達が来るまでにどれほどの資材と時間を使ったと思ってるの!?
鍛刀しても何回も同じ奴ばかり!!あたしのまわりの審神者は皆
あんたたちを侍らせてるのに!!どうして!?


もう疲れたの!!今更何よ!!しれっと現れて!!

何気なく久しぶりに本丸に来てみたらこれよ!!
もっと早くにきなさいよ!!ほんと今更!!
離れている時間が長すぎたから霊力尽きて勝手に折れていったのよ!


あたしのせいじゃない!!あんたたちのせいよ!!


もっと早くにあんたたちが来ていればよかったのよ!!!



「・・・!・・何故」
「・・・ッ・・・ひっく・・・ごめ・・な、さ・・・ぃ・・・ッ!!」


聞いていて、涙が溢れて止まらなくなった。
可哀相だとか、そういった気持ちで泣いているのではない。


ただ、本当に、胸が痛い。


審神者が本丸から離れて一切関与せずに放置した際、
霊力を交わした刀剣は霊気を補充することが出来ずに折れることがあると聞いた。


この本丸の彼らは、じわじわと霊力を失い、力尽きて折れたということだ。
先程の言葉からすると、関与はしなかったが、審神者としての力を放棄することもなく
放置していたということ、そして気まぐれに戻ってきた。


力の弱い短刀から折れていったのだろう。
その事実を受け入れられなくて、一期はずっと部屋の前を彷徨っていた。


江雪は受け入れるために、笠を編み、数珠を作り
またいつの日か会えることを祈り時を過ごしていた。


鶴丸国永は、どうなのだろうか・・・。


「本当に、人間ってのは勝手なもんだな」


これだけ無茶苦茶にして消え失せる奴も

目の前で突然泣き出す娘っこも


「・・・・墓から、暴いといてこの仕打ちかよ・・・ッ」


金の瞳が瞬時に赤に代わり、勢いよく刀を抜いて華に振り下ろす。
顔を両手で覆い涙している華にはその行為に気づけない。
確実にその刃は華の肉に食い込むだろう。

・・・筈だった。


「なッ・・・お前・・は・・・!」



刃を止めたそれは、腕の中で消えた筈の・・・


「から・・・坊・・?・・・いや・・・違う・・・お前・・・」


この本丸の大倶利伽羅ではない。この幼子の霊気を感じる。
対峙しているその瞳は、悲しげに見えた。
さらに、刃に手を添えるそれは・・・


「光坊・・・なの・・か・・・」


困った表情をしている光忠だが、その瞳から察することができる。
この二振の言いたいことは、こうだろう。



主を斬らせたくはない。刀を引けと―――



鶴さん・・・お願い・・・僕らは貴方を傷つけたくはない


・・・・・国永・・・、引け・・・・。


なんて奴だ・・・刀剣の加護を受けている幼子。
いったい、お前は・・・いや・・・君は・・・誰だ?


「ハハッ・・・君は、神様か何かか?」
「つる、まる?」
「おっと、手はどけないでくれ・・・・」


刀をしまうと、安心したかのように、目の前から二振は消えた。
二振以外の加護も感じる。この幼子は多くの刀剣に愛されているようだ。


最高の驚きを最期にもらっちまったな。


「なあ、一つ聞いていいか?」
「・・・なあ、に?」
「君の・・・本丸には、鶴丸国永はいるのか?・・・質問を増やすが・・」


その鶴丸国永は、驚きの日々を、送っているか?


「うん、いるよ・・・」


お鶴って呼んでるの。光もからちゃんも、さだちゃんもいる。
優しく、華を撫でてくれるの。いっしょに、いてくれるの。


「・・・・そうかい・・・」


見届けてくれるんだな、お前さん。


二振の加護が消え去っても、幼子を護るように俺に刃を向けている、君。


なあ、どっかの鶴丸国永(おれ)。


「(ずるいな・・・どうして俺の審神者じゃなかったんだ・・・)」


なあ、この本丸にもらっちまっても?


ああ、睨むなよ。第一此処へ呼んだのは、俺じゃないんだぜ?
言いたいことがあるならそいつに言ってくれ。


「・・・驚きを、有難うな。・・・お嬢」
「つる・・・?」


手をどけた時、鶴丸の姿はなかった。
嗚呼、やはり見つけてしまう、その破片。


空の色は赤黒く、日が沈み始めた。









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