「おや・・・どちら様ですかな?」
「いち・・・ご?」
「気配は感じていましたが、このような幼子とは・・」
「どうしてここにいるのかわからないの。転送門の場所を教えて?」
「転送門、ですか・・・申し訳ない。この本丸にはありません」
「・・・!」
「主殿がおりませぬからな。そうそう、此方もお聞きしたいのですが」


華の本丸の一期一振とは違う。それは当然なのだが。
彼も目の色は赤く、何かを捜しているようにみえた。


「弟達を見かけませんでしたか?」
「おと・・・う・・と・・」
「はい。この本丸に来てから一向に会えていないのです」
「?・・・どういうこと?」
「長く待たせてしまったと思ったのですが・・・どこかに隠れているのか・・」


兄を困らせて、嗚呼、待たせすぎて怒らせてしまっているのかな?
それとも、隠れ鬼をしているのか。可愛い弟達だ。


パキパキ・・・


まただ、またあの、嫌な音が聞こえる。
まさか、目の前でまた失うことになるのか?


「い、いちご・・・お手入れは?・・主さんはどうして帰ってこないの!?」


着物の裾を掴み訴えようとしたが、また頭に記憶が飛び込んでくる。



あれは、顔を隠しているのは恐らく審神者だ。
一期と何かを話していて、一期は何やら慌てている。


「自分に理解出来るようにお話し下さい!!弟達は何故いないのです!?」
「あんたがもっと早くに来ていればよかったのよ!!!」
「っ・・・どういう、ことなのです・・主殿!?待って――!!」


転送門を潜り消えていく審神者。
何かに気づいて部屋へ駆けこむ一期。
目を見開いて、・・・涙を流して蹲る。


「もっと早くに・・・きていれば・・・・ッ・・――!!!」


――――記憶が、途切れた。


頭を振って、目を開ける。
嗚呼・・・まただ・・・。


華の足元にまた、散らばる刀剣の破片。
これは・・一期のだ・・・。



「う・・・ぅ・・・ッ・・・!!」


記憶の中で一期が見ていた部屋。
そこを華は覗いてみた。
片隅に散らばるのは・・・まさか・・・


「・・・や・・げん・・・・みだ・・れ・・・・」


違う・・・華の本丸の彼らではない。
けれども、同じだ・・・彼らじゃないけれども、彼らだ・・・


胸がとても痛い。苦しい。


どうして?どうして・・・・


何の為に、華は此処にいるの?


審神者の長であっても、自身が審神者であっても


この本丸の主でない限り、何も出来やしないのに!!!


首筋に冷たい何かが当てられる。
ちくりと痛みを感じるそれ、気配に覚えがあった。


「驚いたぜ・・・一期を殺したのがこんなちいせぇ娘たぁ」
「・・・・つる、まる・・・」
「!・・流石、見なくても誰かわかるってこたぁ・・審神者だな」
「いちごは、折ってないよ・・・」
「・・・・・ハッ!わかってるさ。驚いただろう?」


首に当てられていた刃先がどけられる。


「まあ、そのナリで刀向けられても泣き喚かない方が驚きだったがな」
「教えて?・・どうして皆いないの?」
「いい質問だな。」


そんなの、俺が聞きてぇさ・・・。


「あいつなら、全て知ってるんだろうがな」
「あいつ?」
「俺が此処に顕現する前からいる・・・」


俺が顕現するのとほぼ同時に、三振やってきた。


「江雪左文字、一期一振、鶯丸だ・・・」
「・・・・」


顕現した時にこの本丸にいたのは、俺とその三振。


そして・・・


――――三日月宗近だ


「三日月なら、離れの部屋にずっといるぞ」
「・・はなれ・・」


同じだ。華の本丸の三日月も離れの部屋にいる。
けれども、違う。ここの三日月もきっと違う三日月だ。


「もっと早くに・・・此処へ顕現してりゃあ・・・」
「つるまる・・・?」


まただ、そういえば、江雪も、一期も言っていた。


「どうしてなの・・・どうして、こうせつも、いちごも同じこというの?」
「・・・そうか、あいつらも、か・・・」


とっておきの驚きを与えてやろうじゃないか。


「答えは簡単だ。」


言葉のまんま、俺、一期、鶯丸、江雪。
俺達がもっと早く、顕現していれば、皆は折れなかったんだよ。









×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -