「華、皆もあまり遠くへは行かないように」
「はあい!!乱ちゃん!いっしょにお花見に行っていい?」
「いいよ!行こう行こう!!」
「ぼ、ぼくも御一緒します!虎くんも・・っ」
「お供します!」
「きれいなちょうちょがいたらいいね!あき兄ぃ」


粟田口兄弟、そして華は広大な花畑の見える丘に来ていた。
何でも、華が政府に出向いた際に「ピクニック」という行為について
空木に聞いたらしく、どんなものか実際に体験しようということになったのだ。


大人組は一期と鳴狐がついているし、粟田口の兄弟もいる。
華に危険なことはまずないだろうと判断し、
皆が快く送り出してくれたのだ。


「んとね、これをこうしてね・・・」
「わあ、器用ですね華様」
「花冠っていうんだよ!」
「摘んで帰って押し花にしようかな!」
「しおり作ってかせんにあげるの!」
「いいですね!」
「あ!ちょうちょ!!」
「わあ!本当です!綺麗な色ですね!!」
「ちょうちょさんまってー!!」
「あ!?華様待って下さい!!」


蝶を追いかける華を追う秋田や五虎退の姿を
微笑ましく丘から眺める一期に影がかかった。
何事かと視線を向けると、にやりと何か企んだ笑顔の薬研と厚が立っていた。


「いち兄、これやってみてくれねえか?」
「ん?これは何かな?」
「草すべりするのに持ってきたんだ!だんぼーる!」
「華がやる前に、誰かしら先にやって安全確認したほうがいいだろうってな」
「成程。わかったよ、その間華を頼むよ」
「おう!任せてくれいち兄!」
「(作戦成功だな・・・)」
「(いち兄絶対こうでもしないと遊ばないもんな)」
「(しっかし、いち兄が草すべりとか・・・)」
「(何か、面白いよな)」


ひそひそと話している間に滑り終わったらしく
「中々楽しいものだね!」と満足そうに戻ってくる
一期に、しまった見逃した!?と残念な表情を浮かべる二振。


「はい!金剛ちゃんのね!」
「有難う御座います!よかったね、金剛」


ぐるぐると喉を鳴らして華に擦り寄る虎は
金剛という名前が付けられていた。
五虎退が名付けたのではなく、華が名付け親だったりする。


「おおきくなったねぇ」
「はい、修行中は、その・・・御心配をおかけしました・・」
「んーん!ごこ兄ぃ頑張って行ってくれてたんだよね!」


そう、五虎退は先日修行から帰ったばかりだったのだ。
修行中の三日間は不安そうな一期の膝の上に座り、
一緒に本を読んだり、何かしらくっついて行動していた。
足元にじゃれついてきていた虎見当たらず、
帰還した五虎退の後ろにのしのしと大きな一匹の虎の姿を見て


「もふもふ!!とらちゃん!!」


そういって華は目を輝かせていた。
五匹の時も名前はあったのだが、一匹になってしまったことで
名前をつけようということになり、金剛となったのである。


「きゃー!!くすぐったいよぉ!」
「こ、こら金剛!駄目だよ・・っ!!」


遠目から見れば襲われている状況だが、安心してほしい。
ただじゃれつかれているだけである。


――――・・・・。


お腹の音が皆から聞こえ始めて、いったん集まることになった。
木陰の下、重箱を開けて並べていく。
中には美味しそうな料理が沢山詰まっていた。


「中見て誰が作ったかわかるなこれ」
「赤い重箱は歌仙の旦那だな・・」
「黒の方は燭台切さんですね」
「有難く頂きましょう」
「それでは皆様!お手を拝借!」


鳴狐のお供が声を上げて、皆が同時に手を合わせる。


「「「「「「「「「いただきます!!!」」」」」」」」」


「あー!!鯰尾兄さんそれ俺のからあげだぞ!」
「早い者勝ちですよ!って骨喰!それっ!!!!」
「・・・早い者勝ち・・・卵焼きは、貰う」
「あ、このおにぎり梅干しです!」
「平野、ではこちらのおかかをどうぞ」
「有難う御座います!前田も昆布を」
「んー!美味しい!!へへっいっただきい!!」
「乱!それ俺の鮭じゃねぇか!」
「へっへーん!隙ありー!!」
「あ、厚兄さん・・・ったこさんういんなーは僕のです!」
「華、ちゃんと食べれているかい?」
「うん!おいしいよ!」
「・・・死守してる。大丈夫・・・」
「鳴狐が見事に華様の分を確保しておりまする!」
「いち兄にも、あーん!」
「!・・・ふふ、では、もらおうかな。あーん」


賑やかな食事の時間は過ぎて行き、そして静寂が訪れる。
満腹になり、穏やかな風が吹いてぽかぽかの陽気。
眠くならない筈がない条件が揃いすぎている。


「・・・寝たか?」
「うん。ぐっすりだよ」
「いち兄は?どうですか?」
「完璧です!」


すやすやと金剛を枕に寝息を立てる華と
添い寝していた一期は夢の中。


「うまくいったな・・・」
「華ちゃんに楽しんで貰おう」
「いち兄にも休んで貰おう計画」
「皆も・・・寝ていいよ・・・。」
「気持ちのいい陽気ですから、この狐も眠くなりまする」
「そうだな。結界も貼ってるし」
「寝ようか、せっかくだしね」
「おやすみなさぁい」


今度は、まだ本丸に来ていない兄弟が揃ったら
皆で此処にこよう。そう、願って。









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