※幼審神者本丸の青江はちょっと拗れてます※
―本編でほとんど姿が出てこなかった理由―

暗めの話ですがちょっと重要



本丸の全ての刀剣男士が、幼審神者に好意的というわけではない。
約一振、心意を読めずにいる男士がいた。


「青江」
「・・・やぁ、石切丸」


実は、古株の男士と一部の者にしか知られていないが彼は本丸で唯一、



幼審神者の霊力を顕現の儀で受けていない刀剣である。



彼は存在しているし、幼審神者が記憶を術で封印され
政府に拉致された際も、作戦会議には参加はしていた。
けれども、短刀、脇差は本丸待機だった故直接関わってはいない。


「今日は、気分が良い・・」
「・・・それは、よかったよ」
「・・・・小さいよねえ、本当に」


にっかりと笑って、本体の鞘を撫でる青江に
石切丸は目を細めて注意深く彼を見ていた。



「そろそろ、此処から出してほしいんだけどねぇ」
「それは、出来そうにないな」
「たたなくなってしまうよ・・・」


役にってことだよ?


「君のその、背に僅かに見え隠れしている憑き物が見えなくなれば、解放してあげられるんだけどな」


遡行軍の脇差が骨の姿になり青江の身体に纏わりつくように薄ら浮かび見える。
彼が何故本丸の中で姿を見せなかったのか、何故顕現の儀で顕現されなかったのか。
幼審神者も知らないこの事実。知っているのは石切丸、太郎太刀、次郎太刀だけである。
彼の姿が見えないことは、本丸の男士は気づいているだろうけれど。


石切丸、太郎太刀、次郎太刀はある日を境に戦に参戦せず
祈祷場に籠るようになっていた。その理由が、これである。


祈祷場の奥の小部屋。扉には封印の札が貼られている。
その中に、青江を封印してどのくらいたったのだろうか。


「此処でしたか、石切丸」
「太郎さん。」
「・・・・・青江」
「おやおや、心配性だねえ」


どこを見ているのか、何を思っているのかはわからない。
けれど、唯一わかるのは、彼に遡行軍の姿が浮かび上がる間は


絶対に華に会わせてはいけないということ。


どうして彼が遡行軍に魅入られているのかはわからない。
完全に堕ちた訳でもなく、正気を保っているのも理解している。
だからこそ、完全に元に戻ると信じ、空木の計らいで「刀解」を
「今」は免除してもらっているのだ。


空木にだけは話しておかなければと、三人で考えた結果だ。
万が一、彼が完全に堕ちてしまった時の為に。


「あまり長くは、隠せないぞ・・・」


時間の問題かもしれないが。


「青江・・・」
「・・・・・・・」
「また来るよ。僕も、太郎さんも次郎さんも」


君が勝つのを、望んでいるよ。


扉が閉まる音がする。青江は動くことはなかった。
目を自身の手で覆い、何も見えなくする。


いつから憑かれているのかは覚えていない。
必死で抑え込んだのは、朧気に覚えている。


「いし・・きりまる・・・っ・・・」
「青江?・・・っどうして!!」
「頼むよ・・・ぼくを・・・・っ抑えてくれっ!!」


どうして、どうして・・・・?


嗚呼、そうか。思い出した。彼と昔の話をしたときだ。


「僕はなんで神剣になれないんだろう・・」
「霊とはいえ、幼子を斬った」


庭ではしゃいで短刀らと駆けていく華を見送る。


「やっぱり・・・それか・・・」


霊を斬る際に、一緒に斬ってしまった幼子。



違う、あれは違う・・・



違う、違う違う・・・チガウ・・・


自分の中の、何かが蠢いた。


あの娘を、斬りたい
あの娘を、斬りたくない


頭に浮かぶのは、苦悩する自分の姿。


あの娘を斬れば、もう苦しまない


甘い囁きが聞こえてくる。


斬ってはいけない。馬鹿なことを考えるな


叱咤する自分の声。


この部屋にいれば、疼くこの身を抑えられる。
だから、最後の自制心で、ここにいる。


過去、幼子を斬らなければ・・・


それだけを思うだけで、憑りつかれるとは考えにくい。


恐らく、それはきっかけだっただけだ。


この身の奥に潜んでいた、斬りたいという思いに憑かれたのだ。


前髪に隠れた赤い眼が煌々と揺らめく。
軋む骨の音。外にある気配が感じられる。


「あ・・・ぁ・・・ダメだよ・・・ッ」


震える手が柄を掴む。
誰でもいい。これ以上は抑えられそうにない。



「だれかいるの??」
「・・・・ッ・・・!!」


ごめんね、おちびさん・・・


「いるよ。助けてくれないかな?」


――――斬り殺させておくれ?









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