本丸内の料理は主に歌仙、燭台切がリーダーになっている。
この大所帯の食事を二人だけで準備することは流石に骨が折れる。
故に、彼らが選抜した男士らと調理班を作り、交代制で行っているのだ。


本日は長期遠征に行っており帰ってこない男士。
遠征に出る男士がいるので、本丸に残る人数は少し減る。


そして、今日の担当は燭台切筆頭の・・・


「華ちゃん・・・?何してるの?」
「みつ!!おべんとの準備してるのー!!」
「・・・・(姿が見えないと思ったら・・・)」
「(まさか厨にいるなんて・・・!!)」
「(光忠・・・だから言ったんだぞ、手伝いをさせるなと・・・)」
「(だって・・・あんな悲しそうな顔されたら断れないじゃないか!!)」


二人の小さき会話の内容とは、数日前のこと。



「華もおてつだいがしたい!!」


これから始まった。


「気持ちだけもらっておくね」


華ちゃんは小さいし、何よりも僕らの主なんだ。
主に雑用はさせられないし、それに・・・


「おい・・・光忠・・・」


何泣かせようとしている・・・。


そういわんばかりに睨み付けてくる大倶利伽羅に気づき
はっと華の顔を見ると、凄く寂しそうで、悲しそうで。


「でも・・・みんな・・・いつもたいへんそうにしてる・・・から・・・ッ」
「ッッ・・!!!?華ちゃん・・・いいかい、主っていうのはだねッ」
「待たせたな!!・・・っと、お嬢どうしたんだ?」
「お鶴・・・っ華・・・も、おてつだい、したい・・・」
「(この流れは・・・まさか)」
「(・・・決まっている)」


「偉いな!!お嬢!!!よし、じゃあ一緒にやるか!」
「!!・・・うん!!」


と、いうことで、華のお手伝いが始まったのだ。
出来るだけ危なくないこと、負担にならないこと。


内番の畑当番の際は収穫しやすいものを頼んだり
雑草取り等、道具を使わないこと。


掃除の手伝いをしたいといえば、ハタキを手にぱたぱたさせてあげたり。




そして・・・冒頭に戻る。


三日月、小狐丸らが遠征に出るらしい。
故に、お弁当を作ろうと考え付いたようだ。
驚いたことに、すでにおにぎりを作る準備が出来ていたのだ。


「どうだ、驚いたか?」
「鶴さん?」
「遠征の指示を出すのはお嬢なんだ。前もって飯の準備くらいは出来るさ」
「あ、鶴さんが釜やってくれたんだね」
「華がふーふーした!」
「そうなの、がんば・・・・っ!?(え・・・火みてたってこと!?)」
「国永・・・」
「俺はちゃんと隣にいたぜ?一人で火の番させるわけないだろう」


海苔や梅干しを準備して準備万端にこにこ笑顔の華と
鶴丸の言葉に光忠は溜息を吐いてから、食事の準備に取り掛かることにした。


「じゃあ、華ちゃんはおにぎり係ね」
「うん!!おにぎり係〜!!」
「遠征部隊のお弁当の分と、ついでに内番組のお昼もおにぎりにしちゃおうか」
「・・・ああ」
「そんじゃあ、本丸組のはあっと驚くおにぎりにしてやるか!」
「鶴さん、変な物入れないでね?」


山のようにおにぎりを握っていく鶴丸と、
一生懸命お弁当につめる華。
光忠と大倶利伽羅は本丸の皆の食事を担当することにした。


「っと、伽羅坊、ちょいとお嬢を頼むな。皿が一杯になった」
「・・・ああ」


お嬢、無理すんなよ?とにこやかに告げて
鶴丸は皿を持って厨を出ていく。
大倶利伽羅は光忠に野菜を手渡し、華の元へ向かう。



「ッ・・いたい!」
「!?・・・ッどうしたっ」
「え・・・華ちゃんどうかした?」


突然華が右手を掴んで顔を顰める。
大倶利伽羅は驚いて駆け寄る。


「からちゃん・・・」
「見せろ・・・どうした?」
「うめぼしのつぼのフタ、欠けてたみたい・・・」
「破片で切ったのか・・・」
「華ちゃん見ててね、救急箱取ってくるから」


光忠が少し焦った様子で厨を出ていく。
華の手首を掴んで大倶利伽羅は傷口をみた。
指の腹をきったようで、血が流れている。


「触る前に言え・・・」
「・・・ごめんなさい・・・」
「・・・・」


ぱくり


「!・・・からちゃん?」


後に何故こんなことをしたのかと

自分を疑ってしまうことになるのだが。

大倶利伽羅は血の流れる華の指をくわえていた。
鉄の味がする。ぺろりと傷口を舐めて口を離す。


「消毒・・・だ・・・・」


きょとんとしている華をそのまま手を引いて水道へ向かう。
ポンプを動かし水を出して傷口を洗う。


「・・・痛いか?」
「ちょっと・・・でもだいじょうぶ」
「お嬢!大丈夫か?光坊から聞いたぞ」
「お待たせ。さ、手当しようね」
「からちゃんがしょーどくしてくれたよ」


「「消毒?」」
「・・・・・・・・」
「おい伽羅坊、何した」
「どういう風に消毒したのかな・・・」
「・・・・慣れ合うつもりは―――」


「「伽羅(坊)ちゃん??」」


この後、華から真相を聞かされるまで後数秒。




―――――・・・・。

おまけ


「華様のお弁当・・・」
「はっはっは。華の弁当が食せるなら遠征も悪くはないな」
「主様・・・この狐の為に・・・ッ!!」
「俺・・愛されてる!!」
「和睦、ですね・・・」
「ですな、江雪殿」



食べるのが勿体なさすぎる!!!!!


と、暫く葛藤していた六振であったが、食べない方が勿体ないと結論を出して
美味しく全部綺麗に食べたのでありました。









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