審神者の長は、時の政府による健康診断を年に一度受けることになっていた。
他の審神者と違い、また政府の人間とも「違う時の流れの空間」に生きている
ということが、主な理由であった。そして前審神者は高齢であったこともある。


前審神者の前の長達は、若くして亡くなったり、
空間の時間に耐え切れず辞めた者もいたらしく
長期に渡り長の務めを果たしていたのは、前審神者だけらしい。
それでも前審神者も、若かりし姿から一変し高齢の身となってしまい、
その生を終わらせてしまった。


故に、今は重役として空木が主な指示を出してはいるのだが
まだまだ根深いこともある。その一つがこの健康診断である。

幼い身でありながら、政府とも現世とも違う時の流れを生きている
小さき少女を失う訳にはいかないと、年に一回だった健康診断を
定期的に行うようにしようと訴えられたのだ。
健康管理は悪いことではない。空木も現長を大事に思っている。
故に、残党からの訴えだというのは気になるが、渋々受け入れることにしたのだ。


そして、これが現長の何回目の健康診断になるのやら。
こちらの時間とあちらの時間は違う故に、
現長についてくる近侍の刀剣男士は毎回渋い顔をしている。


さて、今回は誰がついてきて、どんな顔をするのやら。



――――――・・・・。


「120センチですね。前より1センチ伸びてますよ」
「本当?」
「はい、長様」
「ふふふっ、むつに話してくる!」


嬉しそうに駆けていく小さな審神者の長を笑顔で見送る。
遠くで陸奥守と話す少女の前回のデータと今回のデータを見比べる。
空木はそれに目を通し、異常がないことに息を吐いた。
しかし、別の所から聞こえてくる声に視線を向けざるをえなかった。


「・・・変わりがなさすぎる」
「まるで人形か・・或いは―――」


化物のような・・・・―――


「ごほん!!」
「!?・・・っ持ち場に戻ります!!」


政府の役人の言葉を聞いてからもう一度データに目を通す。
異状はない。それはいいことだ。・・・けれども


「(あの空間は・・・やはり成長を止めているのだろうか)」


いつみても、何度見ても。


小さな審神者の長は全くといっていいほど




変化がないのだ――――。



「空木殿!そろそろ本丸に戻るぜよ?」
「!・・・あ、ああ。何かあればいつでも連絡して来て下さい。長様」
「うん!空木さんも今度本丸にきてね!」
「はい、是非に・・・」



確か齢、十三になられた筈だ。
それでも、あの小さき審神者の長は、姿身七つ程に見える。
さらに、勉学には励まれているのも、霊力のコントロールの術を
定期的に政府の訓練場で学んでいるのも知っている。


けれども、話し方も、容姿も過去のまま。


時が止まっているかのように、少女は生きている。



「(時間遡行軍との戦いが終わらない限り・・・長様は・・・)」



永久に幼き審神者のまま・・・・。



空木は書類を握りしめて、その場を後にした。







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