「華とこうして風呂に入るのはいつぶりか」
「審神者は別にお風呂があるからね」
「あるじさまが御存命の際は、華は一緒に入ってましたからね」
「その後暫くは椿殿と入っていたからな」
「一人で入れるようになったとはいえ、小さいままだから心配はしていたんだけれど」
「・・・・・・」
「小狐丸。いつまで妬いておるのだ」
「・・・妬いてなどおりませぬ」
「一緒に入ったのは三つのときだぞ」
「(主様と風呂に入ったことがあるのが羨ましいなどと・・)」


―――ガラガラ!


「あ!華様いらっしゃい!!」
「がっはっは!ほうれ華!足元に気をつけよ!」
「岩ちゃん有難う!おじゃまします!」


此処は普段刀剣男士らが使用している露天風呂。
今の時間は三条の使用時間である。
先に話していたように、普段は華は審神者用の風呂に入っている。
しかし、何故今三条の皆のいる風呂にいるのかというと。


「わあ!?」
「主様?!如何されました!!」

万が一の護衛を兼ねた風呂の外での待機役に勤めていた
小狐丸であったが、突然中から聞こえた華の声に
即座に立ち上がり、「失礼致します!」と声をかけて飛び込んだ。
着物をびしょびしょにしてあわあわと慌てている華を
濡れるのも構わずに小狐丸は抱き上げる。


「お・・・おふ・・・」
「おふ??」
「おふろ!こわれちゃった!」
「おやまあ」


――――・・・・。


「見事に壊れておったなあれは」
「修復するくらいならば新調した方が早いからね」
「華様でも安心して入れるお風呂になるといいですね!」
「うん!でも・・・」
「どうした、華」


ぎゅうと三日月の膝に座り、抱きつく華に
三日月はよしよしと頭を撫でながら何事かと言葉を待つ。
隣で恨めしそうに見つめてくる小狐丸は無視することにした。


「華は、こんなふうにみんなと入りたいな・・・」


本人から中々おねだり等してこない分、華の言葉は
風呂にいる皆の心を動かすのに十分すぎた。


「華・・・そのように寂しそうな声をするでない・・・俺も寂しくなるだろう」
「え?華そんな声してた?」
「ええ主様・・・(そんな上目で小さく言われてしまえばもう・・・)」
「入ればいいではないか!!がっはっは!」


流れ的にこのまま皆と入る感じになりそうだったのだが、
そこはある人の言葉でぶったぎられる。


「華、皆一緒に入るのは嬉しいだろうけども、それはいけないよ」
「何故じゃ石切丸!!!主様がこれほどまで(可愛らしく)御願いしておるのに!!」
「華は女子、我々は男だ。体は小さくても、性教育はしておかないといけない」


審神者がお亡くなりになる前に、頼まれているからね。


石切丸。苦労をかけるけれど、親がおらぬ故な、頼んだ―――


「とね」
「ですが石切丸、あのお風呂は華様にはまだおおきいですよ。だれかいっしょのほうが安全ではないですか」
「それは確かにそうなんだけども・・・困ったね」
「何を困ることがある」


三日月の言葉に、皆が視線を彼に向ける。
しっとりと濡れた華の髪を愛しむように撫でて
沈まないようにしっかりと抱き抱える。


「俺は華の父親だ。親が共に風呂に入って悪いことはあるまい」



かぽーん・・・・



「みかづきといっしょ?」
「嗚呼、一緒にこれからは入ろうな」
「待て、待て待て三日月」
「何だ小狐」
「初期刀であり近侍であるこの小狐にも権利は有る筈!!!」
「家族水入らず」
「主様ぁ・・・・」
「いしきりまる、どうして皆家族なのにはいっちゃだめなの??」


かぽーん・・・・。


華の言葉に、またしても皆の動きが固まった。
今何といったのか。聞いた言葉は本来審神者の長から出てはいけないものではないのか。


今、華は我々刀剣を、家族と呼んだ。


「華の家族だよね?・・・こまるも・・」
「主様・・・刀であるこの狐を家族と思って下さっているのですか」
「だめ・・・なの?・・・・」


華は皆を刀、物だってわかってる。
ははさまにも教えてもらった。
政府の人にはいっちゃいけないよって。


「大切にしなさい、華。その心を・・・ずっと」


優しく微笑んでくれたその顔を忘れることはない。


「やれやれ・・・敵わないな・・・」
「華よ、俺は嬉しいぞ」
「岩ちゃん!」
「ぼくもうれしいです!!華の気持ちはお風呂みたいに温かいです!」
「そなたの心は、真に・・・得がたき宝・・・」
「む?・・・きゃあ!あはははっ!」
「これ三日月何をしておる!!」
「こそばゆいだろう、こうだ」
「きゃー!!こしょこしょやあ!!あはは!」
「どれ、俺も参加するか!こい今剣!」
「のぞむところです!!」
「まあ、たまには騒がしくしてもいいかな。特別だよ」
「主様!!今お助けします!!くらえ三日月!」
「っ・・・ほう、やるな・・・本気でいくか・・・」


その日以降、審神者の風呂は新調されたが、
華は交代で誰かと風呂に入るようになったとか。










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