求め合う夜



とてもとても疲れたのではないだろうか。

クラピカは人を殺してスッキリできるような人じゃない。亡くなった人が帰ってくるわけでもない。それでも許せないから、悔しいから、憎いから、敵討ちをしないと気が済まない。そのあとにまた別の苦しみが待っていると分かっていても。

きっと心が痛いだろう。きっと罪を罪として背負ってる。
あいつらには他人に働かせる良心がない。クラピカばかり負担になってる。それが辛い。

今は少しでも休んで欲しい。わたしにできることは、側にいて慰めてあげることだけだろう。






眠る体勢で抱きしめ合っていたわたし達だったが、そのうちクラピカの手が別の意思を持って動きだす。
ゆっくりと背中を撫で、腰を撫で、やがては胸を揉みしだく。服をめくって肌に直接触れてくる。
したいのかもしれない。気がまぎれるのなら、それも良いのかもしれなかった。

胸の先端をこりこりと摘まれて快感が走る。じんじんと疼きだした場所がしっとりと濡れていく。自分の反応が早くて恥ずかしい。

「ぁ、クラピカ……キスして……」

消え入りそうになりながらも懇願すると、クラピカは荒々しい動作でもって叶えてくれた。
口内を舌が動き回って唾液が流れ込む。こくりと飲み込むと、ほんの少し彼に染まった気がした。
彼の抱える痛みも苦しみも、全部わたしに流れてしまえばいいのにと思う。





互いに服を脱ぎ捨てる。
わかってはいたけれど怪我のない様子に安心した。

首筋に、鎖骨に、胸の谷間に、クラピカが口付けていく。跡が残っているかもしれない。それが嬉しい。いつもと少し違うから。

サラサラの髪に触れて、そっと頭を抱きしめる。

もういいよ≠ニ言いたくなった。

ガマンしなくてもういいよ。
もっとぶつけていいんだよ。






確かめるように中を探っていた指がそっと抜かれて。
熱い楔がゆっくりと侵入してくる。
ピタリと嵌まると彼の口から吐息のようの喘ぎ声が漏れた。それに反応するように、わたしの中がキュンとなる。

気持ちよくて、そこに居座る存在感が嬉しくて、もっと刺激が欲しくて。ねだるように腰が揺れていた。

「クラピカ……」

そこから先は緋の眼だった。
暗闇にも判るほどの赤≠ナある。

その妖しい美しさにのまれて蕩然としていると、身体の奥を揺さぶる刺激に目が覚めた。今度は波打つ快楽の渦に飲まれていく。

ぐちゅぐちゅした接合の音が、触れ合う肌の弾ける音が、互いの興奮を煽る。快感に漏れ出す声が止まらない。呼吸が荒い。

苦しいほどの気持ち良さに弾けると、弛緩した身体をクラピカが強く抱きしめて。穿つ彼の身体が震える。


彼の欲望を丸ごと受け止める幸せを味わう。


緋の眼が薄れていくクラピカと見つめ合って口付けを交わした。
もっともっとと欲しがるように、抱きしめる腕に力を込める。






再び兆した彼の本能に激しく翻弄されて。
喉が枯れてしまいそうなほどに鳴かされる。


普段大人しい彼が激情を見せるのは敵を前にした時だけ。

そんな予想を裏切る行為が、特別だからこそ与えられる感情が、それができるのが自分だけという事実が、ことさらに嬉しかった。




2023/03/29


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