もう離さないから [4/5]
もう丸二日以上、彼女と顔を合わせていない。

ただそれだけの理由で、
僕の心は荒れ狂っていた。

この無様にも浮き足立った自分の内実を、
いったい誰が想像できただろうか……

僕ですら俄かには信じられないのだから、
他の者なら真っ先に己の目と耳を疑うのだろうな。


「出来ることなら昔の自分に教えてやりたいよ・・・」


伝えたところで、“有り得ない”の一言で一蹴してしまいそうだが。

それでも、ほんの少しの可能性でもいいから、心の隅に用意があったのなら……
ここまで動揺することも、取り乱すことも無かったのではないか?
・・・そう、思わずにはいられない。

仮定に仮定を重ねても、意味が無いのは十分承知。
正直こんなことでも考えていなければ、平静を装う事ができない……




―――そんな自分が腹立たしく、嫌になる。


どうしたらいい?

どうすれば、この気持ちと向き合える?


向き合う?その必要はあるのか?

無かったことには出来ないのだろうか・・・




どうして、気づいてしまったのだろう・・・

どうして、好きになってしまったのだろう?


なぜ、一人では生きられない・・・

なぜ、君じゃなければならない・・・





表面では落ち着き払った態度をとるが、
取り繕った皮の下は枯渇していた。



―――少しでも早く会いたい。


―――少しでも長く側にいたい。


―――離れていては息を吸うのも苦痛。




任務に追われ、
極限まで気を張り詰めて日夜を過ごすことよりも、
余程に耐え難く感じるなど……


―――自分はどうかしている。

―――これが、大切な人を作った結果なのか。



なんと重い代償だろう・・・
そして考えるのは失ったものの事ばかり。



―――代わりに僕は、何を得た?






・・・・・・。






僕は、

そこでようやく気がついた。



―――全てが上手くゆく方法・・・―――





自分が手に入れるべきものと、そのためにすべき行動。

―――失敗を恐れる・・・

それは、自身の胸中奥深くに沈め、ひた隠しにしていた事実。





しかし、自分はまだ何もしていない・・・

逃げることなど許されない。


取るべき行動は・・・ただ一つのみ。




例え君が拒んでも、きっと僕は諦めない。


――逃さない。

必ず掴まえてみせる――


――そして絶対に、もう離さないから・・・――




「ふふ……覚悟していて下さいね?」



嘘のように晴れやかな心に嬉々迫る鼓動を感じながら、
僕は清々しい空気を胸いっぱいに吸い込んだ。










2010/11/04
幕末志士恋愛事情Rank様の幕恋配信一周年祝いの企画参加作品。
同参加作品世界中で誰よりも愛してると繋がってます(^^*)



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