求愛行動?

「わたくし、フェルディナンドに求愛された覚えがまるでありません。やり直しを要求いたします!」
「私とて君から求愛された覚えなど全くないが?」
「そうですか? わたくし何度もフェルディナンドに大好きです≠ニお伝えしていたと思うのですが……」
「君のそれは軽すぎる。私以外の者にも好きだなんだと言っていたではないか。それで自分だけ特別だと思うわけがないであろう」
「え? それって家族に対しての好き≠ナすよね? 父さんや母さん、トゥーリやルッツ……あとはマルクさんとかベンノさんあたりにも一度くらいは言ったかも? でもそれとこれは別物ですし、そもそも大好き≠ニ言ったのはフェルディナンドだけではないですか? 他の人には、家族以外では好き≠セとしか言ってないはずです」
「…………君は他人に好意をばら撒きすぎだ。そのような些細な違いに気付けるはずがないであろう。君の思考はいつも理解に苦しむ……もっと明確に――」
「ではこれからは大丈夫ですね! わたくしの大好き≠ヘ本とフェルディナンドだけですから」

 うふふん、とわたしは得意げに笑った。

「私は本と同列なのか……」

 しかし何故かフェルディナンドは落胆したようだった。わたしにとっては最大級の求愛なのに何故だろうか。

「ご不満ですか? わたくし、本がないと生きられません。それと同じくらい、フェルディナンドのことが大好きだと思ってます。それではダメですか?」

 フェルディナンドは少しだけ考え込んでから話す。

「いや、十分だ。そうだな……私も、君がいなければ生きられないのだと思う。以前と同じ生活に戻るということが、今の私には考えられないのだ……それほど、君は特別なのだと思う」

 好き≠ニか愛している≠セとか、そういうストレートな言葉がフェルディナンドから出るとは微塵も思ってなかったけど……これはこれでスゴい告白だよね。

「うふふん。大好きですよ、フェルディナンド」
「私も君を大切に思っている。他の誰よりも」
「そこは好き≠チて言い返すとこですよ。もぅ〜、照れ屋さんですね!」
「断じて違う。私は君のように軽々しく使わないだけだ」

 今みたいな状況でも出し惜しみするなんて、いったい彼はどんな場面なら口にするんだろうね?
 ちっとも想像できないけど、それを最初に聞かされる相手がわたしだと嬉しいな。
 というか、わたし以外の女性だったら――

「…………なるほど。フェルディナンドの気持ちが少し分かったような気がします……」
「何のことだ?」
「ブラッディーカーニバルの話ですよ」

 わたしはニコリと微笑んだ――




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