××騒動


『いゃぁあーーーーーーーーーっ!!』





ダダダダダダーーーッ


タタタタタタッ………



ーーースパンーーーン!!ーー



「なんだっ!どうしたぁあ!!?」

「何事ですか!?」


藩邸内に響いた年若い娘の叫び声に、藩の要人である男二人が我先にと駆け着けて、部屋の戸を勢いよく開けた。中には真っ青な顔をして目尻を涙で光らせた、叫び声の張本人が佇んでいる。


『っっっっっあ、あいつが!突然現れて!!』

『私に、おっ襲いかかって来てっーーいやぁああっ思い出したくも無い!気持ち悪いぃ〜〜…』


そう言ってうずくまってしまった彼女の姿に、ただ事ではないものを感じた二人は…顔をしかめて緊張した空気を纏う。


「あいつとは誰だ!? どこにいる!逃げたのか!!?」

「外からの侵入は考えにくい。ならば藩邸の者としか…」


晋作という若くして頭領を担う男は、怒りを露わに地団駄を踏んだ。


「くそっ、俺の女に不貞を働く奴ぁ許せねぇ…とっ捕まえて切腹だっ!」


小五郎という参謀と統率を担う男は、悲痛な面持ちで娘を気遣った。


「怖かったろう…大丈夫かい?まさか邸内でこの様な事態を招くとは…」

『うっうぅっっ…っっく…こ・怖かったよぅ…』


小五郎が優しく背中をさすると、とうとう本腰を入れて泣き出してしまった彼女。晋作は居たたまれない思いと憤りから、犯人が逃げ出したと思われる庭へ飛び降りた…!


「必ず捕まえて、死ぬほど後悔させてやるっ!! 小五郎っ!ここは任せた!!」

「ああ、わかったよ」







しばらく彼女をなだめ続け、落ち着いてきた頃を見計らって小五郎は話しかけた。



「晋作ならどんな奴でも捕まえられる。私も居る、もう大丈夫だ」

『はい……すいません、こんな事で泣いたりして…』

「そんなことはない。君は女子なのだから、当前だ。こちらこそ、何と詫びればいいのか……」

『そんなっ、桂さんが謝る必要はないです!』

「いや!藩を取り仕切る者として、目が行き届いてなかった事を詫びさせてくれ。私と晋作の責任だ、本当に申し訳ない…!!」

『や…でも…お掃除は十分に行き届いてると思いますし…これはヤッパリ、自然の摂理と言いますか…仕方の無い事だと思うので…』



「……掃除?…自然の、摂理……というと??」

『ですから、アイツが何処に住みついてて、いつ姿を見せるかなんて…誰にも分らないじゃないですか…だから余計に現れた時の衝撃が大きいというか……でもまさか飛ぶなんて…驚き過ぎて泣いちゃいました。こんな過剰な反応、有り得ないですよね…大袈裟な…』

「失礼…?ひょっとして、"あいつ"と言うのは『蟲』のこと…なのかい?」

『え?…ええ、そうですけど…他に一体なにが??』





―――小五郎は何も言えなかった。

今ごろ派手に捜索隊を取り仕切っているであろう晋作を、どうやって収めようか…

そんな考えを早くも巡らせ、思案していた――――







2010/11/18
これってギャグ?自分が黒光りする"アイツ"が超苦手で…こんな話に。。


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