「おはよう、会長!」

「沢田さん、おはよう!」


学校が近付くにつれ増えていく挨拶の数。
中学生の時ではありえなかったことも、高校に入学してから数ヵ月たった今では恒例となっている。
入学して数週間で、何故か前生徒会長(就任1ヵ月未満)に泣いて頼まれ承諾した後に、生徒からの賛成票が就任条件である3分の2を超え就任が決定した。これもすべて、家庭教師の横暴を耐えに耐え抜いた故だと綱吉は思っている。

生徒会長といっても、仕事はほとんどない。ただ、生徒代表という立場であるだけでいいのだ。
ありえないことがありえてしまう。それが並盛という町である。

と、いうのも、全ては風紀委員長で綱吉の最愛の人である雲雀恭弥がしてしまっているからだ。
だから、好意の感情は雲雀が受けるものだと綱吉は考えている。が、本人や周りはこの状況こそがベストであると考えている。




「おはようございます」


声をかけてきた中に先輩もいたので敬語で返し、笑顔をつくる。

ここのところ、夢幻の調査などで睡眠不足だった綱吉だが、仲間から大空の笑顔と称されるほどの笑顔は、普段と全く変わりは無かった。









その様子を校門付近から見つめていた雲雀は小さく溜め息を吐いた。

睡眠不足のため倒れたりしないだろうかと少し心配していたのだ。しかし、守護者が守ると誓っている笑顔はいつも通り。疲れているくせに、草食動物を相手にしなくてもいいのにと思うのは仕方がない。

安心半分。呆れ半分。


そうしている雲雀自身も、睡眠不足ではあるが、彼にとってそのようなことはどうでもいい事だ。
並盛と戦闘と綱吉。そしてほんの少しではあるが守護者。
雲雀にとって、それ以外はどうでもいい存在だ。そしてその中には自分の体調も入っている。戦闘に影響するからという理由だけで、健康的な生活習慣を送っているにすぎない。

そんな雲雀を1番心配しているのが、言わずもがな綱吉だ。
そして雲雀も、それを理解している。



過去を振り返ってみると、綱吉の表情の5分の2ほどは悲しそうな、心配しているような顔をしていた。…ような気がする。



クスッ、と小さく雲雀が笑った。

綱吉を思い浮かべていると、よく分からない感覚がしたのだ。
ただ、不快ではなかった。














この瞬間までは。





嫌な、背筋が凍るような視線を受けた。

殺気ではない。殺気であるのならば雲雀が臆することは無い。
何か、もっと別なものが。



周囲を見渡してみても、不審な人物はいなかった。


目があったのはただ1人。
雲雀を好きだと、愛しているのだと酔狂なことを言う、沢田綱吉だけ。
でも、綱吉のものではないことはわかりきっていることだった。















「………一体、なに?」




初めに気がついたのは、雲の守護者、雲雀恭弥。








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