*与四郎と喜三太
*与四郎→食満



「待ってください与四郎先輩!!」
「喜三太………」

走り寄って俺を呼び止めたのは、俺の後輩……いや、元後輩で、俺の腕の中の人の現後輩だった。

「与四郎先輩……食満先輩をどこへ連れていくんですか…?」
「ん?……喜三太、おめぇがそんな心配そうな顔しなくたって大丈夫だべ?ちょいとあっちの仕事手伝って貰おうかと思ったんだぁ。」
「はにゃ、そうなんですか?
でも、じゃあ…なんで食満先輩は寝たまんまなんですか?」
「………………。」
「食満先輩は、たとえ怪我していても、自分で歩いて行くハズです…
それに、忍務の前はいつも僕達に言ってから行くんです。それなのに、今日は何も言っていませんでした。昼間の委員会の時も………
どうして……………ガッ!?」


そこまで聞いたところで、喜三太の首の後ろを手刀で打つ。


この後輩は、なかなか鋭い指摘をするようになった。
俺が方便を使って話せば騙されてくれるかとも思ったが、そこまで甘くはなかった。成長したんだな。

これは将来が期待できる。

それに先輩思いの良い子だ。


けれど、今は見逃して欲しい。

もう見ていないから、見逃すという表現が正しいのかどうか分からないが。


「わりぃな喜三太。
急所は外してあっからよ、明日になったら、保健室でちゃんと見て貰うんだべ?

わりぃ、わりぃな。


けんど…………」



此処と相模は、あまりにも遠すぎるんだ。






だから、こいつを、いつも俺の近くに置いておこうと思って。