*食満(と文次郎)
*現パロ
乗る予定の電車に乗り遅れた。
理由は簡単、昨夜降った雪が今朝には凍っていて、滑るわ滑るわで必要以上に慎重に歩いたからである。
階段を駆け登ってホームに着いた瞬間に電車のドアが閉まってしまう事程辛いものはない。
まぁ、元々登校時間より幾分か早い電車に乗っているので、電車一本乗り遅れるくらいなんともないのだが。
次の電車まで約5分。
イヤホンを耳に捩込み、携帯音楽プレーヤーに入っているお気に入りのバンドの音楽を流す。
プレーヤーを少しいじくったところで、何か視線を感じふと画面から顔を上げると、反対側のホームに立っている男子学生と目が合った。
その瞬間、妙な胸騒ぎがすると同時に既視感が頭を過ぎった。
音楽も何も聞こえなくなって、頭の中に川を挟んで対峙する自分と彼の映像が流れ込んでくる。
これは…なんだ?
何時の記憶だ?
幼い頃……いや、もっともっとずっと昔の…………
そこまできて、はっとしてもう一度彼を見た。
思い出した。
紛れもない、アイツは、はるか昔、400年以上も前に恋人だった…………
「文次…郎………」
そう呟いた瞬間に電車が来て、
アイツは見えなくなった。