君を探しにきたわけじゃない。だって君はもうどこにもいないし、そもそも僕ははぐれた君を見つけたことがなかったから。 君を探しにきたわけじゃない。だって君はもう15センチを許してくれないし、そもそも僕が君に触れる権利なんてなくなったから。 君を探しにきたわけじゃない。だって君はもう大きくなっているし、そもそも僕と過ごした日々は思い出になったから。 ねえ、だから。僕は。 僕は、君を探しにきたわけじゃないんだよ。 君とかくれんぼをしたいわけじゃないよ。君に触れる意味を知らずにいたいわけじゃないよ。君が隣りにいた昔へ戻りたいわけじゃないよ。 君は本当はすぐそばにいた。15センチは忘れない。思い出は消えない。 じゃあ僕はどうして、こんなところにいるんだろうね。ねえ。君にはわかるのかな。君もこんな気持ちになったことがあったのかな。ねえ、それなら。 僕は、君を探さない。 だって君はいなくなってなんかないから。変わってしまっただけだから。あのときから時間が経ってしまっただけだから。 僕は探せないから。笑っている君に触れられないから。祝福してと笑っている君に触れることはできないから。ブルーに染まらない瞳に見つめられるなんてこと、たえられないから。 僕は君を探しにきたわけじゃ、ないんだから……。 前祝いだと言って、君がくれた小さな箱。若草色が素敵なリボンで飾られている。このラッピングごと取っておきたいなんて言ったら、君はきっと、同じ大きさの箱に同じ包装紙とリボンを巻くのでしょうね。でも、違うんだよ。そうじゃないんだよ。 だから私はその箱を開けた。両手に収まる程度の小さな箱。ふわふわのクッション。埋もれたような、小さな模型。バス。 私はあの日、君を探しに行った。懐かしい気がした。そして私は君を見つけた。秘密基地。 私が君にあげられるのは45センチ。15センチはあの人に決めたのだから、そう、決めたのだから。私が君にあげたことのある15センチ、もう、過去の話になるのだけれど。だって君にはもう、他の15センチがあるから。 喜ばしいことだねと他人事のように言った君。至福に染まった瞳で私の瞳を見つめた君は、その色を移してくれた。君はいつも私のそばにいて、そのくせ私を見つけるのが下手だった。だから、約束をしたじゃない。 見失ったときはあのバスに乗ろう、って。あのバスはどの停留所にも留まるから、いつか必ず会えるって。 私は君を見つけたよ。いつだって錆び付いて動かなくて、雨宿りにしか使えないバスに乗っている君を見つけたんだよ。君は私を見つけられなかったかもしれないけど。私はいつだってそばにいたのに。 君はいつも私にはぐれるなと言っていたね。そう言って、私からはぐれたのは君のほうだった。 絶対に見失わないから、私はバスに乗らない。君はそんなことも知らないまま、その小さなバスを私にくれたのでしょうね。 やっぱり君は、私を見つけられないのでしょうね……。 からっぽのバス title:DOGOD69 top |