+++ | ナノ

 たとえるなら。
 その色はきっと、白。



 れる ‐Good-bye‐



 彼女は笑った。
 手に持つのは長い筒。赤いリボンの巻かれた長い筒。中身はもちろん、卒業証書。

 クラスメートと写真を撮り、他クラスの友人とも写真を撮り、彼女のパールピンクのデジタルカメラのデータは間違いなく思い出で満たされてゆく。
 卒業アルバムの後ろのほうのページには寄せ書きのスペースが設けられているため、そこには大好きな友人たちの見慣れた文字が並んだ。ピンク、ブルー、グリーンやオレンジといった鮮やかな色で様々なメッセージが残されている。
 何年か経てば、自分は自然とこの文字を指でなぞるのだろうか──。

 シャッター音もフラッシュも一段落ついたころ、彼女は特に仲の良かった友人であるCとUと一緒にいた。
 三人で写真を撮り、高い声で話したなら、きっとそのまま別れてしまうのだろう。誰もがその場の空気に合わせれば、「卒業」に対する、少し不思議で浮かれた気分のままでいられるのだろう。

 彼女は未来を見据える。それは近いものかもしれない、けれど彼女にとってその行為ははっきりとした変化を示す。

「ね、部室行ってみようよ」

 彼女は笑う。
 友人Cと友人Uが一瞬だけ表情を変えたことはわかったけれども、彼女の心の中は凪いでいた。少なくとも、一年前よりは。

「……うん、そうだね。最後だもんね」

 友人Uが答える。友人Cもそれに続いて、そうだね、とぎこちなく答えた。

「寄せ書き、圭くんにも、書いてもらわなくちゃ。もう帰っちゃったかな?」
「わ、私が、電話するよ」
「そう? じゃあしーちゃん、お願い」
「任せて、任せて」

 かつての後輩Kは、かつての彼女の、かつての想い人。

 すべては過去のこと。



 + + +



 わたしねー、みっちゃんも、しーちゃんも、圭くんも、好きだよ。これからも多分、ずっと好き。ちょっといやなところがあっても、きっと嫌いにならないと思うの。好きでいると思うの。高校のときにね、仲良くした人のこと、大切にしたいんだよ。みっちゃんもしーちゃんもわたしも違う大学に行くし、圭くんは高校に残るけど、んー、やっぱりお別れって感じしないから、なんて言おうね。ねえ圭くん、こういうときはなんて言おうか。後輩からしたら、先輩の卒業は、お別れになる?

 ああ、わかった。わたしたちはお別れしないよ。
 お別れするのは、わたしたちじゃなくて、わたしたちの今の関係だから。


 さよなら。


top
 
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -