宇宙遊泳 「あれ、見て、おねえちゃん。すごいね、とってもきれいだね」 「うん。あれね、天の河って言うんだって」 「あまのがわ? 雨の川なの?」 「空に浮かんでる川だよ、きっと」 「へえー」 闇の中に寝転がった姉弟は、浮かぶ星々を指差してクスクス笑った。だって不思議だったのだ。こんなにも綺麗な「星空」を見たことなどなかったから。 「夏の大三角形見っけ」 「? なにそれ?」 「あれだよ、よく見て。大きな三角」 「あ、ほんとだ」 「確か、えーと、あの三つの星は、ベガとデネブとアルタイルっていうの」 「でぶ?」 「でぶ、って。あはは! 星の名前のことだよ。デ、ネ、ブ」 「でねぶ」 しばらくの間、二人は視界いっぱいの星々を眺めていた。吹いた風が前髪を撫でる。ジジジ、と、どこかで虫が鳴き、さわさわとパジャマが揺れた。 二人の世界に響くのは穏やかな寝息。朝になれば見えなくなってしまう星空に囲まれて、姉弟は眠った。 おやすみ、また明日。 夏期拍手お礼小話でした top |